騒がしい日々の坂道を

深夜にあてどなくNetflixをさまよっていたら、深作欣二監督作『バトル・ロワイヤル』を見かけた。へー、なつかしー…うわ、すご...!いや、でも、そろそろ寝なきゃ…って中断。そんな夜が何度かあった。

 

見るたびに強く喚起された記憶は、この映画を映画館で見ている15歳の私。

あれはイオンだった。いや、当時は違う名前の商業施設だった。中学校を卒業した直後に、同級生5〜6人で行ったはずだ。確かR-15を謳い文句にして相当煽っていて、その制限にまたそそられた。中学生は見れないらしい、ということで、卒業した直後の春休みに行ったはず。僕らは手に入れたばかりの携帯電話で連絡を取り合った。面白い絵文字を見つけては意味もなく送りあった。確か2人くらいが自分と同じauの携帯電話だった。懐かしき言葉シーディーエムエーワン。

自転車で集合して、アップダウンの激しい坂道を、みんなで笑い合いながら立ち漕ぎで走ったあの日。友達だけで映画館に行ったのは初めてだったのかも。

映画館では生徒手帳を見せたような気がする。15歳が大人である証みたいだった。

 

肝心の映画からは何を受け取ったのか?

簡単な感想は

前田亜季かわいい」「やっぱ安藤政信かっこいい」「たけし全然死なない(笑)」

くらいだった気がする。

どちらかというと、『15歳未満では観られないほどの激しい暴力描写を自分は観ている』という興奮の方が記憶にある。

 

実は、私は原作小説も買っていた。分厚くて黒い本。凹凸加工のされた赤い文字。映画を見る前に買ったのか、後に買ったのか、は記憶が無い。あの本はまだ実家にあるのだろうか。『面白い』という感想は持っちゃいけないような気がして誰にも言わなかったけど、当時こっそり何度も読み返していた。15年の人生がしっかりと背景に描かれた登場人物が死んでいく姿に、強く心を動かされていた。強調される死の辛さや怖さと、過剰にドラマチックでヒューマニズムに満ちた感動的な描写。それらの刺激をごちゃ混ぜに受け取った15歳の私は、やはり興奮していた。

そして、不謹慎で非道徳的かもしれないけれど、あのゲーム性の巧妙さにも心を奪われていた。武器がランダムで配られる点と、殺し合いを促すために時限的に禁止エリアを増やす点が、本当によくできている。

後に、このゲーム性を抽出して作られたであろうゲームの『PUBG』と『フォートナイト』もやってみた。普通に楽しめた。

 

そんな経験の果てに、今更観直した『バトル・ロワイヤル』もやっぱり楽しめた。

テンポ良く壮絶な映像が襲ってくる。デカい感情で迫ってくる。

でも、没入はできなかった。

やはり、当時は『自分と同い年の人たちの殺し合いを見ている』という当事者感が、スパイスになっていたのだ。

あの映画体験は、中学生と高校生の間に一瞬だけあった、不安と期待でいっぱいの特別な時間だったらしい。

 

ちなみに、映画のエンディングテーマは時代を感じる曲だった。当時は不良が好きな音楽だと思ってた。だから、今もそんなにカッコよさはわからない。


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