2024年後半に読んだ本の記録

仕事(っぽいこと)が忙し過ぎて、全然本を読んでない。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』がタイムリー過ぎて気になったが、それすら読めてない。『花束みたいな恋をした』後半の菅田将暉の気持ちわかってきた。

 

読み終わらないまま読みたい本が出てきたりして、同時に5冊くらい読んでる途中のタイミングもあった。この状態は全然良くなくて混乱した。2冊くらいまでか。

 

2024年のベストは『フリアとシナリオライター』。15冊という少数候補のうちのナンバー1だけど。

 

以下、遡っていく。

 

 

12/15

『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』(小原晩)を読み始めた。


10/16

『わかりやすさの罪』(武田砂鉄)を読み始めた。


6/6

『ショットとは何か?』(蓮實重彦)を読み始めた。


12/9〜12/15【15】

『漫才過剰考察』(髙比良くるま)、読了。

言語化の鬼。そんな風に言語化できるのか、そこまで考えるか、という驚愕の連続。

M-1に間に合ったのは幸運。

寄席漫才の特徴、M-1の出番順の影響、海外進出に必要な能力など、とにかくちゃんと考えたことが無いことばかりが細かく言及されていく。ゲスト出演していたTBSラジオ『脳盗』で言ってた通り、文字が太くなったり大きくなったりしてるのがハリー・ポッターシリーズへのオマージュというのは、体験してみるとバカらしくて笑えた。漫才同様にめちゃくちゃ固有名詞入れてくるんだけど、やっぱり意味を知ってればリーダブル。その固有名詞も含めて2024年の今を捉えている。

粗品が令和ロマンのことをどう考えてるか知るために買ったところもあるが、二人の対談は思った以上にちゃんと話してて、お互いにリスペクトしてることがよくわかる。本筋とはズレるが、粗品の自信とプライドは圧倒的で、その気高さにも驚く。そんな粗品がボケずスカさずちゃんと答えてるのは、相手が高比良くるまだからだろう。

総じて、とにかく、高比良くるまは、たくさん見て、たくさん考えている。

 


9/6〜12/8【14】

『全校生徒ラジオ』(有沢佳映)、読了。

長嶋有がインスタでオススメしてたので手に取った。ポッドキャストを題材にしている点と、文字が横組である点を目新しく感じて読んだ。カバーの紙も凝っていて、作品世界を適切に説明する装丁も大変可愛らしかった。

過疎地域の村に住む女子中学生4人が始めたポッドキャストの文字起こしと、その文字起こしをしている不登校の男子中学生が書いた文章を、交互に読む構成になっている。この内容なので、webで読まれる文章という演出のために横組になっているのだろう。

まず、前提として、この作品は中高生向けの児童文学だ。そのせいか、ポッドキャストが作り出すコミュニティが、とても平和でユートピア的に描かれていて、性善説に依拠し過ぎている有り得なさも感じる。しかし、「こういう世界もあり得る」と提示する意義はあるかもしれない。読みながら、自分はやはり雑談が聴きたくてポッドキャストを聴いているのだと気づいた。彼女達のキャラクターが少しずつ立ち上がり、雑談がカラフルに感じられるようになっていく。

物語の最初と最後で、明らかな変化をするキャラクターがいて、作者がポッドキャスト文化に託した希望を感じた。

 


6/5〜12/1【13】

『4』(青松輝)、読了。

いろんな夜に少しずつ読んだ。面白い言葉選びや、気になる言葉の組み合わせはあったが、覚えたいほど好きな歌は無かった。五七五七七の最初の五とそれ以降が無関係に見える歌や、最後の七とそれ以前が無関係見える歌の意図が汲みきれなかった。なぜそれらの言葉が必要なのかがわからなかった。五七五七七の切れ方がよくわからなくて読めない歌も多かった。上級者向けだったのかもしれない。相対的に、木下龍也の歌の『分からせ力』の強さを知った。

英語をそのまま入れて短歌の一部にする手法は新しく感じた。

思わず手に取りたくなる豪華な装丁も良かった。

4

Amazon

 


4/30〜9/2【12】

『フリアとシナリオライター』(作:マリオ・バルガス・リョサ/訳:野谷文昭)、読了。

最高過ぎる!読んでる間、何度も興奮して、居ても立っても居られなくなった!

ポップなジャケットに惹かれて買った。

主人公とフリアの間に起きるドタバタ青春ラブロマンスって感じのメインのストーリーラインと、その作中に登場する怪人作家ペドロ・カマーチョ執筆のラジオドラマ短編が、交互に綴られていく。あとがきによると、メインストーリーは著者の自伝的要素の入ったものらしく、ペドロ・カマーチョにもモデルがいたようだ。このメインストーリーとラジオ脚本が相互に緩やかに影響し合う。

メインストーリーには、色濃くペルーの風土的な要素が詰め込まれていて、主人公がどうにか結婚しようと奮闘する場面には、カフカ的な不条理コメディ要素も感じた。ペドロのラジオ脚本は常にかなり派手な展開を含んでいて、相当ドラマチックな内容になっている。読みながら、喜怒哀楽の色んな感情を引き摺り出されることが多かった。その上で、最後には『どうなるのだろうか』で妙な余韻を残す。メインストーリー上のペドロの変化に合わせて、この脚本に登場人物が変に入り乱れてしまい、天変地異のオンパレードになり、破綻していく。このシニカルな可笑しさも魅力的だった。

しかし、メインストーリーで出会った人々とのやり取りやプライベートな内容が、直接的(あるいは下世話に)入ったりしない点には、ペドロの作家としての品位と矜持を感じた。

全てが青春の1ページとして相対化していくラストには、過ぎ去りし日々へのビターな味わいがあった。

 


2023/8/22〜2024/8/25【11】

『奇奇怪怪』、読了。

人気ポッドキャスト番組の書籍化2冊目。スキマ時間にのんびり読んでたら、気づけば1年かかっていた。

まず、『漫画雑誌』というコンセプトがすごく好き。そのコンセプトをうまく現実に落とし込んだブックデザインにやられた。書籍が持ちがちな権威性の剥奪に成功している。

最初はこのB5サイズで全ページ文字を読むのキツいのでは、と思ってたけど、イラストやデザインされたタイトルと各種広告を上手く入れ込んで、飽きさせない作りになっていた。広告がポジティブに働いてる例は久々に見た。そのパロディ性というか、読者を撹乱してやろう、という姿勢も含めて楽しく受け取った。

原則としてはポッドキャストの傑作選の文字起こしみたいな感じで、考えたこともなかった斬新な視点も、マジで些細で馬鹿馬鹿しいやり取りも、大事にしたい考え方のヒントも、たっぷり詰まっている。活字化されている悪ふざけみたいなやり取りには、『電気グルーヴのメロン牧場』を思い出したこともあった。