2015年に観た映画の記録

2015年に見た映画を、遡る形で記録しておく。
この年はいろんな映画評から良作に誘導された。
宇多丸、k.onodera、蓮見重彦町山智浩菊池成孔…。
こんなに多くの映画評に触れた年は初めてだった。
特に『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』を聴く習慣ができたのは大きかった。


12/31
『自由が丘で』を観た。
この映像から真っ先に感じたNHKの韓国語講座みたいな印象は何が原因だったのだろう。カットが変わった途端に俳優が動くように見えるからだろうか。それと、あのヌルヌルとしたズームは何だったのだろう。と不思議に思う箇所はあったのだが、その映像も慣れると面白く感じて不思議だった。何の注釈も無しで、時系列を入れ替えて「時」の意味を無効化するような編集は特に面白かった。その面白さを支えるのは、加瀬亮の全ての状況を受け入れるあの演技だった。

12/27
ともすれば小品になりそうな題材なのだが、映画世界の大きな作品だった。映画の外側にも広がりが感じられる映像の強さがあった。音楽はカッコいいし、映像に寄り添うように鳴る静かな音の効果はじわじわと感じる。しかし、ピンチョンの原作がやはり複雑過ぎるのはある。非常に頑張ってまとめているけど、元の情報量に無理があった。推理ものと思わずに展開を楽しんだ方が得。原作同様、雨のシーンのセンチメンタルは美しい。ドックはずっとおしゃれでとぼけてて愛らしいし、シャスタはずっと哀しく美しい。スクリーンで見たかった。

12/24
グレムリン』を久々に観た。
ギズモは言うまでもなくかわいいが、変態したストライプ達もかわいく感じる点には、自分の加齢を感じた。昔ほど怖いと思わなかった点も同様の理由だろう。昔見た時は『グロテスク』を大雑把に『怖い』に分類していたようだ。クリーチャーとしての存在感がとにかく生々しいが、人間のように振る舞うのが愛らしい。グレムリンが暴れる点以外の話は悉く忘れていたが、こんなに主人公ビリーに非がある話だったっけ。ビリーの母対グレムリンがスリリングで意外にも一番面白かった。

12/23
スター・ウォーズ エピソード7 フォースの覚醒』を観た。
2015年の新たなスターウォーズとして楽しめた。今までの流れを踏まえた上でシリーズをアップデートする内容になっていたと思う。ズームを多用したりするスピード感のある現代風の映像、カイロ・レンを筆頭に一枚岩ではなく人間味が出てきた敵側に新規性を感じた。レイの登場はナウシカ感たっぷり。大まかに言ってエピソード4をなぞる展開になっていた。第一段階はクリアしたから、次が大事。

12/18
味園ユニバース』を観た。
記憶が戻ってからの渋谷すばるの暴力的な存在感が見もの。しかし、彼の音楽への身の献げ方は足りなかったのでは。ラストはもっと迫力出せたんじゃないか。意図的なんだろうけど、抑え過ぎていると感じた。ラストシーンは現実だったんだろうか?脚本的に破綻が起きてるような気がするが、どうなのか。主人公の妄想なら成り立つ気もする。構図がカッコいいショットは散見したが、この監督はもっと広角で撮ってたイメージがあって、そっちの方が好きだ。

12/9
八つ墓村』(野村芳太郎1977)を観た。
雄大過ぎる景色を捉えた超ロングショットや荘厳過ぎる音楽の大袈裟な雰囲気は、このB級感漂う脚本には相応しくない。推理ドラマ仕立てを捨ててオカルトに走ったのは、偏に市川崑作品との差別化を意識し過ぎた結果だったのでは無かろうか。結果的に、同時期に作られた『犬神家の一族』に比べていかにも古臭い作品になっているようだった。美術やキャストから察するに、巨大過ぎる製作費を持て余しているのだろう。

12/5
犬神家の一族』(市川崑1976)を観た。
斬新な映像も使いつつ、入り組んだ事件をできるだけわかりやすく説明してくれた。皆が同時に喋る演出や、回想シーンの様々なエフェクトを使った魅せ方には驚いた。意外とカットも割っている。金田一のワイルドでセクシーな魅力と、犯人の見せる何とも言えない笑顔など、役者の力も充分に引き出されている。ルパン3世を思い出させる音楽が鳴りっぱなしだった点には驚いた。

12/3
『ラッシュ プライドと友情』を観た。
臨場感たっぷりの映像の連続で、映画館で観るべき映画だった。F1カーの細かいギミックのアップの映像を効果的に多用して、F1のスピード感と恐怖を煽っていた。大変スリリングだった。それと同時に、二人の主人公のキャラクター描写も良かった。はっきりと対比するように描きながら、二人とも魅力的に見えるのは凄い。時間による二人の変化と、レーサーゆえに二人が抱える共通の孤独を繊細に描いていた。

11/28
アンヴィル! 〜夢を諦めきれない男たち〜』を観た。
売れなくても少年のように30年音楽をやり続ける純粋さは、ボーカルのリップスの眼をキラキラと輝かせてた。リップスのポジティブな言葉と、ロブの静かさとの対比がまた素晴らしい。最後のコンサート会場に行くシーンでは、報われることを祈ってしまうほど、感情移入してしまった。やられた。レコーディング中のいざこざのシーンでのリップスの言動には、笑いながら感動してしまって、おかしくなりそうだった。収まりが良過ぎる内容だったので、フェイクドキュメンタリーかなと疑ってしまった。

11/23
スターダスト・メモリー』を観た。
素晴らしく美しい一瞬についてウディ・アレンが語るシーンは、映画を観る歓びに満ちていた。『8 1/2』から大きな影響を受けている(あるいは、下敷きにしている)のは明らかで、記憶と映画内現実と映画内映画の演出が渾然となる作りだった。カメラと被写体の間にフィルター的な何かを置くショットが多かった。彼の神経症的世界観はいつも以上に強調されていた。

11/22
オール・ユー・ニード・イズ・キル』を観た。
スターシップ・トゥルーパーズにタイムループを合わせた内容。ギタイはなかなか面白いデザインだった。ループして死に続けることへの苦悩が少ないように感じた。慣れた後の戦闘シーンはカッコ良く見れた。ループしたことがスピーディにわかる演出は良かった。最後のループは意味がわからなかった。

11/15
『ドライブイン蒲生』を観た。
音声がリアル過ぎて聞き取りづらかったのは至極残念だったが、皆がバラバラに動き、奥行きと重なりを感じさせる豊かな映像は面白かった。黒川芽以の頭の悪そうな演技が良かった。頭が悪いというのは非常に演じづらいのではないかと初めて気づいた。ああいうキャラクターで存在感を持っているのを、映像では見たことが無かったように思う。染谷君は染谷君だった。

11/12
イージー・ライダー』を観た。
荒々しいエネルギーに満ちていた。既存の映画との戦いだったのだろう。多用されるハレーションと美しい逆光で役者を捉える映像からそれを感じた。議論しまくるシーンは眠かったが、小気味よい音楽と共に気楽に走る主人公達の映像を観ていると、嫌でも楽しくなる。間違いなく自由を描いていた。唐突に芸術性が爆発するトリップシーンには驚いたが、それ以上にラストの唐突さはもっと衝撃的だった。

11/7
インランド・エンパイア』を観た。
冒頭、話の筋を追おうとし過ぎて寝まくった。起きてからはボーっと映像をありのまま受け入れてだいぶ面白くなったが、映画のルールは把握できなかった。なぜ英語とそれ以外の言語のシーンがあるのか?時間軸は存在するのか?疑問は放置した。乱暴なくらいに重なる映像。ディゾルブインとアウトの行ったり来たり。鳴り続ける不快な音は音楽とも重なり続ける。なぜか顔のアップが多用されて、情報がそれだけになるのは苦痛だった。色彩設計にこだわりを感じた。最初は緑多め。次に赤が多め。次に青がチラつくようになって、RGBを表してるのでは?とアタリをつけた。テレビの砂嵐はその象徴で、重なる映像はそのヒントだったのでは?否。無意味な推測に思える。この映画世界には三種類の人がいた。世界に疑問と不安を覚えてる人と、世界に順応してる人と、世界を知った風な人。エンドロールはめちゃくちゃかっこいい。

11/3
フロム・ダスク・ティル・ドーン』を観た。
粗筋に書いてあった通りの滅茶苦茶な展開をする映画だった。これ、二つの話一つにしたろ。でも、どちらか一つで延々続いても観てられなかったかも。とんでもないB級感だったけど、多大なる労力を感じた。会話の端々にタランティーノ節は感じた。

10/31
アメリカン・ハッスル』を観た。
ゴージャスな映像で、煌びやかに熾烈な心理乱戦を描いていた。音楽と映像の合わせ方に映画の豊かさが充満していた。どのキャラクターも面白かったが、ロザリンの搔き回しっぷりは強烈だった。不確定要素がガンガン打ち込まれて、登場人物にも観客にも何も予想できない。完璧に全てを支配する登場人物がいなかったのが良かった。観客は騙されているような気分から抜けられず、本筋がどんどん無くなっていくような不安が興奮に変わる。急速なズームは緊張感を煽る。

10/19
『ブレックファスト・クラブ』を観た。
古めかしい音楽とファッションに少しひいてしまうが、まだ普遍性を保てていると感じた。子供と大人の間では悩む。親の影響下で高校生はもがくものだったな。最終的に恋愛に捉われてしまうのは、高校生らしくて仕方ないとは思える。ブライアンのその後が気になる。

10/16
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を観た。
どのキャラにも憎めないかわいさがあった。王道の展開を踏まえた上で面白く脱臼させる展開が上手くて、パロディにし過ぎてスベったりしていなくてバランスが良かった。いろんなSF映画の要素を詰め込んだ上で80年代の音楽で束ねてるのが、またセンスが良かった。ガジェットやメカのデザインが古めかしいのに洗練されてて面白かった。あー、悪を悪として単純化し過ぎていた点はあるのかな。

10/10
アウトロー』を観た。
古典的な探偵小説らしい内容を下敷きにした上で、重みとリアリティのあるアクションと、細かく適切に緊張感を持って伝える演出が最高に面白かった。観たことの無いやり取りが多くてドキドキした。ベタを踏まえた上で少し外してるのが緊張感を煽る煽る。アクションはまだこんな映画が作れたのか!

10/4
ブロークン・フラワーズ』を久々に観た。
ひょっとしたら、探偵小説を下敷きにしてヘロヘロにした映画だったのだろうか。疑ってものを見ると何でもそんな風に見えてしまう。ピンク、サングラス、フレッド・ペリーという風に世界にはミスリードが溢れている。でも、一番表情が物語る。みんな巧い表情を作る。どの女も犯人に見えるという状態を作り出している脚本も凄い。飛行機の飛び立つシーンからはストレンジャー・ザン・パラダイスを思い出す。ビル・マーレイは無尽蔵に哀愁を託せるな。進むほどボロボロになる姿がグッとくる。人生が復讐している。何たる人生の苦味。ご都合主義は無い。人生では完璧な反復は起きない。

9/27
『ミッション・インポッシブル ゴーストプロトコル』を観た。
あのジェットコースターに乗っているかのようなスリル満点の映像と、楽しいガジェット感は気楽に見られる娯楽映画の最高峰だろう。トム・クルーズのサービス精神旺盛なアクションには素直に爆笑。

9/23
イコライザー』を観た。
ギャグに見えるほどデンゼル・ワシントンのアクションが狙ったカッコよさ。アメコミヒーローかよ。服装や技にヒーローっぽさは無く、銃を持ち歩かないところに強いこだわりを感じた。ツッコミどころ満載だけど、カッコイイ。

9/21
『ゴースト・ワールド』を観た。
独特の台詞の応酬と、状況と少しズレている映像が面白かった。間違いなく青春映画だったけど、こんなにストレスを溜めている映画も珍しい。鬱屈したエネルギーは発散することなくジワジワと主人公を苦しめる。旅立ちであり逃避であるラストには少し驚いた。スカーレット・ヨハンソンはこの頃からエロさ全開だった。

9/19
バーン・アフター・リーディング』を久々に観た。
よく見るとスパイ映画を皮肉ったパロディが多く、カメラワークにもこだわりを感じた。同時にCIAの恐怖、離婚率の高さ、運動不足などアメリカ的不安も反映している。皆の表情が素晴らしい。ブラッド・ピットがあんなアホな役をやってることも凄いが、目に知性の無いあの演技が良い。意外と代わりが思いつかない。

9/5
天才マックスの世界』を観た。
既に確かに存在していたウェス・アンダーソン特有の雰囲気。このユーモアたっぷりの映像。真正面から向かい合うカメラ。説明の難しい脚本。それでも、やっぱり誰かがちゃんと成長する物語にはなってる。

8/30
『LUCY/ルーシー』を観た。
観始めてから、「あ、これリュック・ベッソンだ」と気づいた。タイトルもLUCっぽいじゃん。どこにベッソン感があるのか。それは、良過ぎる編集のテンポと編集に散りばめられた独特のユーモアだろう。本筋との関係が微妙な映像をガンガン繋ぐ感じというか。後はアクションのあり方か。AKIRA2001年宇宙の旅などを想起させるラストは、最初の展開からは全く想像できないし、やり過ぎ感もあるかも。もっとアクションでヒロインの魅力引き出したの見たかった。全知全能っぷりを楽しむ映画なので、ハラハラしないのは少し惜しかった。

8/29
シュガーマン 奇跡に愛された男』を観た。
フェイクドキュメンタリーに見えるくらいに、映像が準備万端で撮られていた。ドキュメンタリーも劇的過ぎると疑わしく感じるもんなんだな。ロドリゲスの変わらない強さはカッコイイ。

8/8
『さらば冬のカモメ』を観た。
三人のキャラクターをとても繊細に描いている面白いロードムービーだった。三人の表情も抜群で楽しめる。遠景のショットもカッコいい。何でもない場面を長く丹念に描くのがまた素晴らしい。ホテルの部屋と電車の中のシーンが特に面白かった。オーバーラップを妙に多用していた。

8/5
『マッドマックス サンダードーム』を観た。
やはりこの作品もちゃんと自由への闘争だった。世界観の完成度も高い。もはやお約束のカーチェイスも最高。しかし、最大の問題点は行き当たりばったりに見える脚本だろう。いくら何でもご都合主義的に見える。

8/1
『セインツ ー約束の果てー』を観た。
殆どのシーンで光が綺麗だった。ルースの横顔に微かに風が吹くショットは特にかっこよかった。大筋のストーリーをシンプルにして、人物の細やかな心理描写で魅せてくれた。

7/30
トゥルーマン・ショー』を久々に観た。
久しぶりに見たら、ディレクターのクリストフとアクターのトゥルーマンの関係に、初めて親と子のメタファーを感じた。危険を排除されていても、人生は自分で選べた方がいいんだ。狂気まで孕んでしまうジム・キャリーの演技はやっぱり面白い。あのタイアップCMのドギツさは何回見ても笑う。全編通してテレビ番組への痛烈な批判も感じる。視聴者がトゥルーマンにエールを送るという点は凄い。外に出たら見られないトゥルーマンに外に出るよう言うのだから。

7/29
『ライブテープ』を観た。
日常と非日常が交錯する様子が面白かった。前野健太の歌には生活の音が良く似合う。そして、元旦の風景の音は途中まで前野健太の歌のBGMでしかなかったのに、最後には前野健太の歌が東京の景色のBGMになる。その見事な転換が静かな感動を呼ぶ。

7/23
オンリー・ゴッド』を観た。
暗くてコントラストの強い赤青緑の光に彩られた静止画みたいな世界の中で、人だけがゆっくりと動いたり、カメラだけがゆっくり動いたりする映像の連発で、少し眠かった。ポロシャツのただのおっさんにあそこまで狂気を与えたのは凄い。

7/18
『マイ・マザー』を観た。
映像の緩急の激しさ、鮮やかさ過ぎる映像美、部品への執拗なズーム、背後からのショットの多様さなど、この頃から独特だったようだ。ゲイのセックス描写と繰り返される癇癪描写には驚いた。母親への愛情と憎悪を、葛藤や迷いも含めてこんなにはっきり示した映画は珍しいんじゃないか。ジュテームの言いやすさに気づく。文化が違う。

7/12
『マッドマックス 怒りのデスロード』を観た。
以前の作品と比べて世界観の完成度が上がっていた。完成度上がり過ぎてて現在の世界と繋がらなそうなくらいだった。戦闘シーンがメチャクチャ複雑化しててどうやって脚本書いたのか疑問だった。コマ落ちさせまくった大胆な早送りは映像として大丈夫か、と心配するほどだったが、戦闘が矢継ぎ早で手に汗握る展開ばかりだった。神話的、あるいは、古き良き映画的という論評はよくわかる。フュリオサにマックスもイモータン・ジョーも喰われてた。それでも、トム・ハーディはカッコよかった。

7/11
12モンキーズ』を久々に観た。
情報の提示を抑えた演出によって、危うい脚本を成立させてることに気づけた。伏線の多さにも改めて気づいた。妄想とタイムトラベルの真偽をフラフラする脚本が凄い。永遠のループが成立する快感は何度見ても素晴らしいが、妄想かもしれないオチでも良さそう。ブラッド・ピットのキレた演技が面白い。

7/9
ドッペルゲンガー』を観た。
反復される暴力描写が不思議だった。ユースケがカッコよかった。不思議な脚本で、ヌルヌル進んで先が読めない。皆、真剣に生きておらず、世界の受け入れ方が軽い。ドッペルゲンガーを安易に入れ替えたり統一するようなことをしないのがいい。マルチスクリーンは撮影の事情からか?見たことないものを観れたが。少し『トータル・リコール』を感じた。

7/7
『パンチ・ドランク・ラブ』を観た。
狂った男が恋愛で狂って最強になる映画だった。ハリウッド式『宮本から君へ』か?音楽が場面の殆どの雰囲気を決めていた気もする。おかしな会話が異様なテンポでゲリラ的に繰り広げられる。唐突な音が世界を揺るがす。本当に次の瞬間に何が起こるのかわからなかった。とても贅沢に見えるカメラワークが楽しい。フィリップ・シーモア・ホフマンアダム・サンドラーの口喧嘩が最高。

6/26
あおげば尊し』を観た。
丁寧なカットの積み重ねで出来ていた。時々聞き取れないくらい自然なトーンで誰もが話していた。カメラワークは観客に「見ている」という行為を強調しているように感じた。それは覗き見のようだった。教育にある相補関係を強く感じた。それが生徒と教師の救いになっていた。死の扱い方への答えは出ているともいないとも言える。

6/24
赤ちゃん泥棒』を久々に観た。
こんなにハチャメチャだったっけ…?ハチャメチャさを助長するのがギュイーンと動くカメラ。あーやっぱりアホな映画だった。ニコラス・ケイジはこの頃が一番表情豊かだったかもしれない。情けない顔が最高。

6/20
ミッドナイト・イン・パリ』を観た。
パリの風景がオシャレだった。幻想的かつコミカルな形でSF要素を消化した脚本が面白かった。ユーモアと懐古主義の皮肉の効いた扱い方もいかにもウディ・アレンだった。オーウェン・ウィルソン演じる主人公もいかにもウディ・アレンだった。

6/11
ギルバート・グレイプ』を観た。
とにかくクソ素晴らしかった。昔からディカプリオがいいと思ってたけど、ジョニー・デップも最高だった。遠景のカットがめちゃくちゃカッコいい。音楽とフェードアウトはちょっとダサい。家族への複雑な思いと自分の気持ちに引き裂かれそうなギルバートの気持ちがずっと切ない。家族への複雑な愛情をとてもうまく描いている。セリフのやり取りがとてもうまい。崩壊しそうなギルバートの家、僕らはずっとここにいるというアーニーの歌、さよなら。伏線も綺麗に回収する。

6/7
『サウダーヂ』を観た。
タイ、フィリピン、ブラジルがドロドロと流れ込む山梨で文化と人がジリジリと摩擦を起こす。音楽も言語も入り乱れる。想像していたより激しさは無かった。終わりも始まりも無く日常生活がゆっくりと進行していく感じだった。

5/20
『マンハッタン』を観た。
マンハッタンの優雅な映像に合わせる壮大な音楽が笑えるくらいに贅沢な気分をくれる。ウディ・アレン的な皮肉の効いた空間で、都会的な恋愛が繰り広げられる。神経質でありながら無神経であり得るような、まだらな精神性を持った男女のやることなすこと可笑しい。大人は屁理屈ばかり。インテリ主義の固有名詞漬けには反吐が出る。デートが楽しそう。

5/16
『竜馬暗殺』を観た。
手持ち撮影も多く、ドキュメンタリーの手法を鋭く持ち込んだリアル路線の時代劇。殺陣も剣術っぽくなく喧嘩的で、現代でリアルに見える表現。音楽は大友良英を感じた。夢みたいな感触はどこかフランス映画とかを感じる。猛烈なアングラ感。

5/13
刑務所の中』を観た。
漫画を映像でかなり正確に再現していた。規則正し過ぎると馬鹿馬鹿しくなり、生活を細かく確認すると面白くなる。あのやるせなさを可笑しく映像に保存しているだけで成功だ。

5/12
『ドライヴ』を久々に観た。
吹替版の方が主人公の寡黙なかっこよさが強調されてる、と感じた。ネオンに暴力はよく似合う。

5/9
カフカの『城』』を観た。
アホらしい唐突さと気まずさが面白い。助手に爆笑。フリーダとのラブシーンにも爆笑。恋愛要素がこんなに強かったかな?と思ったけど、映像というものの強さゆえかもしれなかった。端々にアキ・カウリスマキを感じた。地域性だろうか。イメージの固定の方向性から考えても、小説から読むべきだ。

5/6
『スリーパー』を観た。
映画というよりコントのようだった。松本人志を感じた。200年後という設定は荒唐無稽なギャグを連発しやすい下地だった。意味不明な言葉、現代への皮肉を受け入れやすい。社会の変容への痛切な批判もあったのだろう。台詞には含蓄を感じる。セットはトリュフォーの『華氏451』で、音楽に早送りの映像を合わせる編集はチャップリンのようだった。

5/4
『バードマン(あるいは、無知がもたらした予期せぬ奇跡)』を観た。
ドラムの音が場面の雰囲気をすごくうまく表現していた。最後の方までワンカットに見えるような編集には驚いた。あそこに断絶があるのは面白いかもしれない。映画内の舞台の失敗か成功かを軸にしたメタ構造で、ハリウッド批判や演技の意味について言及していくが、最後にはそれらも乗り越えていく。超現実的な能力というギミックの使い方も面白い。とても凝った脚本で、伏線の回収の仕方も素晴らしい。端的に言って語りたくなる映画。演技・芝居の良し悪しなんてわかるのか、と問われているのかもしれない。芸術表現にまとわりつく亡霊のような商業性、という表現は言い得て妙。

5/2
麻雀放浪記』を観た。
ところどころ笑ってしまうのは時代性の表れの部分かもしれない。あの皆の必死さがかっこいい。真田広之よりも鹿賀丈史の格好良さと、大竹しのぶの可愛さが見どころか。

5/2
『ヒート』を観た。
アルパチーノとデニーロが恐ろしくカッコいい!三時間、手に汗握りっぱなし!渋すぎる!子どもの頃にゃわかんなかったわ!孤独VS孤独!ダークナイトに影響与えてそう。

4/29
『ザ・マスター』を観た。
想像より難解だった。長回しがカッコよかった。映像と音楽がゴージャス。ホアキン・フェニックスの演技は狂ってて、姿勢も歩き方も表情も別人。最高。

4/25
マジック・イン・ムーンライト』を観た。
想像以上にロマンチックコメディだった。ウディ・アレン節の皮肉屋はガッツリとコリン・ファースに注入されてた。セリフが笑えるほど鋭い。それを跳ね返すエマ・ストーンの愛らしさ。史上最高に楽しげなデートシーンだった。

4/19
『セッション』を観た。
手に汗握る緊張感。部分ズームがテンポ良く挿入される。先が読めない脚本だった。ドラムって速ければいいのかよ?という疑問はあった。菊地・町山批評論争を合わせて読むと、どちらの言うこともわかった。自分がラストシーンに感じた違和感は、カタルシスが唐突で作為的に見え過ぎた点ではないかと思った。あのシーンに至るまでの段階的な準備ができていなかった。受け攻めの心理的緊張は見応えがあった。

4/8
『ヤノマミ』を観た。
よくぞこんな映像を撮った。危険が溢れている。衝撃的な映像の連発だった。虚構みたいに異様に美しい森の中で、生・性・聖が鮮やかに混沌と入り乱れる。文化が違い過ぎる。それでも、やはり人間だった。

4/1
ザ・コミットメンツ』を観た。
とてつもない魔法の起きている映画。歌うま過ぎ。生々しさがある。ロケーションと人物に宿る雰囲気がどうしても露わになる。アイルランドの背景はとにかく画になる。

3/14
レニングラードカウボーイズ、モーゼに会う』を観た。
一作目よりわけのわからないシーンが多かったが、元ネタになる文化的背景がわかっていなかったからかも。相変わらずアホな映像が続くが、一作目より更にシュールで、一部ついていけなかった。一作目のタイトルは冷戦を皮肉っていたのでは、と今更気付いた。ギニギニギニギニワッチワッチワッチワッチケイオンテケアナの演奏シーンが一番笑った。

3/10
レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』を観た。
全てがチグハグに進む。ツッコミ不在でボケ倒していく。人には使命があって、いるべき場所がある。求めてなくてもそこに辿り着くことはある。彼らはどこか人間離れした聖性を持っている。動く写真、といった様相の風景が流れていく。音楽が旅と共に変わる。ちゃんとロードムービー

2/27
アメリカン・スナイパー』を観た。
想像よりも真っ直ぐなストーリーだった。もっと戦争で人格が歪んだりする映像を期待してしまっていた。思ったより戦闘は見やすかった。反戦映画だと思ってみればそうなんだと思うけど、カッコ良過ぎる演出は戦争を肯定することにはならないだろうか。

2/15
ミュータント・タートルズ』を観た。
昔のアニメや映画に倣ってコミカルさを忘れていない内容だった。アクションシーンはコミカルかつカッコいいという難しいバランスを保ってた。隣に座ってた人が自分と同じくらいタートルズに詳しそうで驚いた。そんな人初めて見た。

2/12
ゴースト・オブ・マーズ』を観た。
ゴリゴリにヘビーロックなBGMの中で殺しまくる死にまくる!登場人物の呆気なさ過ぎる死に様は、死の無意味さを殊更に強調していた。主人公はやたらとエロかった。

2/1
インターステラー』を観た。
映画館で観るべき壮大さを持った作品だった。よくわからない都合の良さはこの際置いておこう。この映像世界は圧倒的過ぎる。

1/28
『ファイナル・ディステネーション』を観た。
死のピタゴラスイッチ。運命、あるいは、不運が敵という漠然としてスリリングにしづらい内容だが、具体的で細かい芸が面白さをわかりやすくしてくれる。『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦氏が好きなモチーフだとは思った。

1/17
ゴーン・ガール』を観た。
調べたらゴーンには色んな意味があるらしい。去った、妊娠した、優れている。音楽が多いのはとんでもない質量の内容をテンポ良く進めるためだろう。登場人物の印象の誘導・操作が非常に上手く演出してあった。最初は物語の中の世論と映画の観客は一致した意見を持つようにされるが、視点が切り替わった瞬間に僕らは彼女と共犯にさせられる。そして、何度も印象は操作される。サイコパスサイコパスに見えた。冴えないベン・アフレック

1/2
大人は判ってくれない』を観た。
子ども時代への憧憬はたっぷり詰まっていた。監督の個人的な記憶の再構成に見えたが、真偽はどうなんだろうか。冒頭では父親に愛されてるように見えたのに、話が進むにつれて、そうではなくなった。あるいは、そうではなかったのが表出したのだろうか。