『ドライブイン蒲生』を観た。
音声がリアル過ぎて聞き取りづらかったのは至極残念だったが、皆がバラバラに動き、奥行きと重なりを感じさせる豊かな映像は面白かった。
黒川芽以の頭の悪そうな演技が良かった。頭が悪いというのは非常に演じづらいのではないかと初めて気づいた。ああいうキャ
ラクターで存在感を持っているのを、映像では見たことが無かったように思う。染谷君は染谷君だった。
『
インランド・エンパイア』を観た。
冒頭、話の筋を追おうとし過ぎて寝まくった。起きてからはボーっと映像をありのまま受け入れてだいぶ面白くなったが、映画のルールは把握できなかった。なぜ英語とそれ以外の言語のシーンがあるのか?時間軸は存在するのか?疑問は放置した。
乱暴なくらいに重なる映像。ディ
ゾルブインとアウトの行ったり来たり。鳴り続ける不快な音は音楽とも重なり続ける。なぜか顔のアップが多用されて、情報がそれだけになるのは苦痛だった。
色彩設計にこだわりを感じた。最初は緑多め。次に赤が多め。次に青がチラつくようになって、RGBを表してるのでは?とアタリをつけた。テレビの砂嵐はその象徴で、重なる映像はそのヒントだったのでは?否。無意味な推測に思える。この映画世界には三種類の人がいた。世界に疑問と不安を覚えてる人と、世界に順応してる人と、世界を知った風な人。エンドロールはめちゃくちゃかっこいい。
10/19
『ブレックファスト・クラブ』を観た。
古めかしい音楽とファッションに少しひいてしまうが、まだ普遍性を保てていると感じた。子供と大人の間では悩む。親の影響下で高校生はもがくものだったな。最終的に恋愛に捉われてしまうのは、高校生らしくて仕方ないとは思える。ブライアンのその後が気になる。
10/16
『
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を観た。
どのキャラにも憎めないかわいさがあった。王道の展開を踏まえた上で面白く脱臼させる展開が上手くて、パロディにし過ぎてスベったりしていなくてバランスが良かった。いろんな
SF映画の要素を詰め込んだ上で80年代の音楽で束ねてるのが、またセンスが良かった。ガジェットやメカのデザインが古めかしいのに洗練されてて面白かった。あー、悪を悪として単
純化し過ぎていた点はあるのかな。
10/10
『
アウトロー』を観た。
古典的な探偵小説らしい内容を下敷きにした上で、重みとリアリティのあるアクションと、細かく適切に緊張感を持って伝える演出が最高に面白かった。観たことの無いやり取りが多くてドキドキした。ベタを踏まえた上で少し外してるのが緊張感を煽る煽る。アクションはまだこんな映画が作れたのか!
10/4
『
ブロークン・フラワーズ』を久々に観た。
ひょっとしたら、探偵小説を下敷きにしてヘロヘロにした映画だったのだろうか。疑ってものを見ると何でもそんな風に見えてしまう。ピンク、サングラス、フレッド・ペリーという風に世界にはミ
スリードが溢れている。でも、一番表情が物語る。みんな巧い表情を作る。どの女も犯人に見えるという状態を作り出している脚本も凄い。飛行機の飛び立つシーンからは
ストレンジャー・ザン・パラダイスを思い出す。
ビル・マーレイは無尽蔵に哀愁を託せるな。進むほどボロボロになる姿がグッとくる。人生が復讐している。何たる人生の苦味。ご都合主義は無い。人生では完璧な反復は起きない。
9/27
『ミッション・インポッシブル ゴースト
プロトコル』を観た。
あのジェットコースターに乗っているかのようなスリル満点の映像と、楽しいガジェット感は気楽に見られる娯楽映画の最高峰だろう。
トム・クルーズのサービス精神旺盛なアクションには素直に爆笑。
9/23
『
イコライザー』を観た。
ギャグに見えるほど
デンゼル・ワシントンのアクションが狙ったカッコよさ。アメコミヒーローかよ。服装や技にヒーローっぽさは無く、銃を持ち歩かないところに強いこだわりを感じた。ツッコミどころ満載だけど、カッコイイ。
9/21
『ゴースト・ワールド』を観た。
独特の台詞の応酬と、状況と少しズレている映像が面白かった。間違いなく青春映画だったけど、こんなにストレスを溜めている映画も珍しい。鬱屈したエネルギーは発散することなくジワジワと主人公を苦しめる。旅立ちであり逃避であるラストには少し驚いた。
スカーレット・ヨハンソンはこの頃からエロさ全開だった。
9/19
『
バーン・アフター・リーディング』を久々に観た。
よく見るとスパイ映画を皮肉ったパロディが多く、カメラワークにもこだわりを感じた。同時にCIAの恐怖、離婚率の高さ、運動不足などアメリカ的不安も反映している。皆の表情が素晴らしい。
ブラッド・ピットがあんなアホな役をやってることも凄いが、目に知性の無いあの演技が良い。意外と代わりが思いつかない。
9/5
『
天才マックスの世界』を観た。
既に確かに存在していた
ウェス・アンダーソン特有の雰囲気。このユーモアたっぷりの映像。真正面から向かい合うカメラ。説明の難しい脚本。それでも、やっぱり誰かがちゃんと成長する物語にはなってる。
8/30
『LUCY/ルーシー』を観た。
観始めてから、「あ、これ
リュック・ベッソンだ」と気づいた。タイトルもLUCっぽいじゃん。どこに
ベッソン感があるのか。それは、良過ぎる編集のテンポと編集に散りばめられた独特のユーモアだろう。本筋との関係が微妙な映像をガンガン繋ぐ感じというか。後はアクションのあり方か。
AKIRAと
2001年宇宙の旅などを想起させるラストは、最初の展開からは全く想像できないし、やり過ぎ感もあるかも。もっとアクションでヒロインの魅力引き出したの見たかった。全知全能っぷりを楽しむ映画なので、ハラハラしないのは少し惜しかった。
8/29
『
シュガーマン 奇跡に愛された男』を観た。
フェイクドキュメンタリーに見えるくらいに、映像が準備万端で撮られていた。ドキュメンタリーも劇的過ぎると疑わしく感じるもんなんだな。ロドリゲスの変わらない強さはカッコイイ。
8/8
『さらば冬のカモメ』を観た。
三人のキャ
ラクターをとても繊細に描いている面白い
ロードムービーだった。三人の表情も抜群で楽しめる。遠景のショットもカッコいい。何でもない場面を長く丹念に描くのがまた素晴らしい。ホテルの部屋と電車の中のシーンが特に面白かった。オーバーラップを妙に多用していた。
8/5
『マッドマックス サンダードーム』を観た。
やはりこの作品もちゃんと自由への闘争だった。世界観の完成度も高い。もはやお約束のカー
チェイスも最高。しかし、最大の問題点は行き当たりばったりに見える脚本だろう。いくら何でもご都合主義的に見える。
8/1
『セインツ ー約束の果てー』を観た。
殆どのシーンで光が綺麗だった。ルースの横顔に微かに風が吹くショットは特にかっこよかった。大筋のストーリーをシンプルにして、人物の細やかな心理描写で魅せてくれた。
7/30
『
トゥルーマン・ショー』を久々に観た。
久しぶりに見たら、ディレクターのクリストフとアクターの
トゥルーマンの関係に、初めて親と子のメタファーを感じた。危険を排除されていても、人生は自分で選べた方がいいんだ。狂気まで孕んでしまう
ジム・キャリーの演技はやっぱり面白い。あのタイアップCMのドギツさは何回見ても笑う。全編通してテレビ番組への痛烈な批判も感じる。視聴者が
トゥルーマンにエールを送るという点は凄い。外に出たら見られない
トゥルーマンに外に出るよう言うのだから。
7/29
『ライブテープ』を観た。
日常と非日常が交錯する様子が面白かった。
前野健太の歌には生活の音が良く似合う。そして、元旦の風景の音は途中まで
前野健太の歌のBGMでしかなかったのに、最後には
前野健太の歌が東京の景色のBGMになる。その見事な転換が静かな感動を呼ぶ。
7/23
『
オンリー・ゴッド』を観た。
暗くて
コントラストの強い赤青緑の光に彩られた静止画みたいな世界の中で、人だけがゆっくりと動いたり、カメラだけがゆっくり動いたりする映像の連発で、少し眠かった。ポロシャツのただのおっさんにあそこまで狂気を与えたのは凄い。
7/18
『マイ・マザー』を観た。
映像の緩急の激しさ、鮮やかさ過ぎる映像美、部品への執拗なズーム、背後からのショットの多様さなど、この頃から独特だったようだ。ゲイのセックス描写と繰り返される癇癪描写には驚いた。母親への愛情と憎悪を、葛藤や迷いも含めてこんなにはっきり示した映画は珍しいんじゃないか。ジュテームの言いやすさに気づく。文化が違う。
7/12
『マッドマックス 怒りのデスロード』を観た。
以前の作品と比べて世界観の完成度が上がっていた。完成度上がり過ぎてて現在の世界と繋がらなそうなくらいだった。戦闘シーンがメチャクチャ複雑化しててどうやって脚本書いたのか疑問だった。コマ落ちさせまくった大胆な早送りは映像として大丈夫か、と心配するほどだったが、戦闘が矢継ぎ早で手に汗握る展開ばかりだった。神話的、あるいは、古き良き映画的という論評はよくわかる。フュリオサにマックスもイモータン・
ジョーも喰われてた。それでも、
トム・ハーディはカッコよかった。
7/11
『
12モンキーズ』を久々に観た。
情報の提示を抑えた演出によって、危うい脚本を成立させてることに気づけた。伏線の多さにも改めて気づいた。妄想とタイムトラベルの真偽をフラフラする脚本が凄い。永遠のループが成立する快感は何度見ても素晴らしいが、妄想かもしれないオチでも良さそう。
ブラッド・ピットのキレた演技が面白い。
7/9
『
ドッペルゲンガー』を観た。
反復される暴力描写が不思議だった。ユースケがカッコよかった。不思議な脚本で、ヌルヌル進んで先が読めない。皆、真剣に生きておらず、世界の受け入れ方が軽い。
ドッペルゲンガーを安易に入れ替えたり統一するようなことをしないのがいい。マルチスクリーンは撮影の事情からか?見たことないものを観れたが。少し『
トータル・リコール』を感じた。
7/7
『パンチ・ドランク・ラブ』を観た。
狂った男が恋愛で狂って最強になる映画だった。ハリウッド式『宮本から君へ』か?音楽が場面の殆どの雰囲気を決めていた気もする。おかしな会話が異様なテンポでゲリラ的に繰り広げられる。唐突な音が世界を揺るがす。本当に次の瞬間に何が起こるのかわからなかった。とても贅沢に見えるカメラワークが楽しい。
フィリップ・シーモア・ホフマンと
アダム・サンドラーの口喧嘩が最高。
6/26
『
あおげば尊し』を観た。
丁寧なカットの積み重ねで出来ていた。時々聞き取れないくらい自然なトーンで誰もが話していた。カメラワークは観客に「見ている」という行為を強調しているように感じた。それは覗き見のようだった。教育にある相補関係を強く感じた。それが生徒と教師の救いになっていた。死の扱い方への答えは出ているともいないとも言える。
6/24
『
赤ちゃん泥棒』を久々に観た。
こんなにハチャメチャだったっけ…?ハチャメチャさを助長するのがギュイーンと動くカメラ。あーやっぱりアホな映画だった。
ニコラス・ケイジはこの頃が一番表情豊かだったかもしれない。情けない顔が最高。
6/20
6/11
『
ギルバート・グレイプ』を観た。
とにかくクソ素晴らしかった。昔からディカプリオがいいと思ってたけど、
ジョニー・デップも最高だった。遠景のカットがめちゃくちゃカッコいい。音楽とフェードアウトはちょっとダサい。家族への複雑な思いと自分の気持ちに引き裂かれそうなギルバートの気持ちがずっと切ない。家族への複雑な愛情をとてもうまく描いている。セリフのやり取りがとてもうまい。崩壊しそうなギルバートの家、僕らはずっとここにいるというアーニーの歌、さよなら。伏線も綺麗に回収する。
6/7
『サウダーヂ』を観た。
タイ、フィリピン、ブラジルがドロドロと流れ込む山梨で文化と人がジリジリと摩擦を起こす。音楽も言語も入り乱れる。想像していたより激しさは無かった。終わりも始まりも無く日常生活がゆっくりと進行していく感じだった。
5/20
『マンハッタン』を観た。
マンハッタンの優雅な映像に合わせる壮大な音楽が笑えるくらいに贅沢な気分をくれる。
ウディ・アレン的な皮肉の効いた空間で、都会的な恋愛が繰り広げられる。神経質でありながら無神経であり得るような、まだらな精神性を持った男女のやることなすこと可笑しい。大人は屁理屈ばかり。インテリ主義の固有名詞漬けには反吐が出る。デートが楽しそう。
5/16
『竜馬暗殺』を観た。
手持ち撮影も多く、ドキュメンタリーの手法を鋭く持ち込んだリアル路線の時代劇。殺陣も剣術っぽくなく喧嘩的で、現代でリアルに見える表現。音楽は
大友良英を感じた。夢みたいな感触はどこかフランス映画とかを感じる。猛烈なアングラ感。
5/13
『
刑務所の中』を観た。
漫画を映像でかなり正確に再現していた。規則正し過ぎると馬鹿馬鹿しくなり、生活を細かく確認すると面白くなる。あのやるせなさを可笑しく映像に保存しているだけで成功だ。
5/12
『ドライヴ』を久々に観た。
吹替版の方が主人公の寡黙なかっこよさが強調されてる、と感じた。ネオンに暴力はよく似合う。
5/9
『
カフカの『城』』を観た。
アホらしい唐突さと気まずさが面白い。助手に爆笑。フリーダとのラブシーンにも爆笑。恋愛要素がこんなに強かったかな?と思ったけど、映像というものの強さゆえかもしれなかった。端々に
アキ・カウリスマキを感じた。地域性だろうか。イメージの固定の方向性から考えても、小説から読むべきだ。
5/6
『スリーパー』を観た。
映画というよりコントのようだった。
松本人志を感じた。200年後という設定は荒唐無稽なギャグを連発しやすい下地だった。意味不明な言葉、現代への皮肉を受け入れやすい。社会の変容への痛切な批判もあったのだろう。台詞には含蓄を感じる。セットは
トリュフォーの『
華氏451』で、音楽に早送りの映像を合わせる編集は
チャップリンのようだった。