息子と一緒に映画を観られるようになってきた。
1〜5月までは、「週末の夜に一緒に映画を観る」ということをしていた。自分は幼い頃に『金曜ロードショー』や『ゴールデン洋画劇場』を楽しみにしていたので、息子にその習慣を作ってみたいと思って始めた。彼に事故的に映画に出会わせたい。そのための映画選びがとても楽しかった。以下の条件を作って考えていった。
- 残酷描写や性描写などが無い映画にする。
- いろんな年代の映画にする。
- いろんな国の映画にする。
- なるべく上映時間が短い映画にする。
- 息子も自分も妻も楽しめる映画にする。
1の条件を満たそうとすると、自然と子ども向けになりやすくてアニメが多めになる。3の条件を満たそうとすると、有名な作品は大抵がアメリカ産で、なかなか大変だと気づいた。そして、これら全ての条件を満たそうとすると、ディズニー・ピクサーが強い。ジブリはその次に強い。それらをどう避けるか、もなかなか難しい。
最近では、息子と一緒に映画館に行く機会も増えた。
一時期、『アベンジャーズ:エンドゲーム』の影響もあって、MCU作品ばかりを観てる時期もあった。
以下、作品の感想。ネタバレもあるだろうから、注意されたし。
6/30
『アラジン』(ガイ・リッチー監督)を観た。
2019年におけるディズニー実写化としてのアップデートがとてもうまくいっていて、ほとんど違和感なく楽しめた。その改変は特にジャスミンに顕著で、あそこまで女性をエンパワーメントする役になるとは思わなかった。吹替で観たので歌声はわからないが、演じるナオミ・スコットも力強さを備えた美しさが素晴らしかった。アニメ版の『アラジン』はシンデレラを男女逆転したようなストーリーだったが、2019年にはそれだけでは足りなくて、知識も経験も豊富なジャスミンが国王になるべき、という最適解を導き出していた。やはり差別は社会のためにも良くない。
その部分を強化したり、国王を少し賢王に変えたりの微調整はしたものの、基本的にはアニメのストーリーに沿って話は進む。冒頭にあるアラジンの街での大立ち回りも同じなのだけど、アクションに躍動感があって、実写にする意味を感じられた。パルクールを取り入れたような動きもイマドキだった。アラジンはダンスも上手くて、運動神経抜群で良かった。
そして、あのウィル・スミスのジーニーの芸達者っぷり!今後、彼を見かけるたびに脳裏にジーニーが浮かびそうで、鑑賞に支障が出そうなレベルのインパクトだった。表情の面白さが半端無かった。
アクションの見せ場も足されていて、ランプを奪い合うシーンなど、観てて飽きない作りになっていた。
一方で、監督ガイ・リッチーの作家性はかなり感じづらかったが、展開のスムーズさやアクションの魅せ方の巧さに集約されていたのかもしれない。1か所だけ『ジャファーがランプを宮殿で使う』→『ランプを奪われたとアラジンが家で気づく』→『ジャファーが王になる』の流れを、何故かワンカットっぽいカメラのパンで繋ぐ独特の編集には、『スナッチ』等で見た作家性を感じた。
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6/23
『海獣の子供』(渡辺歩監督)を観た。
映画そのものが詩になっていた。『生命、海、宇宙が相似関係にある』という世界のワンダーを主人公の琉華以外は当然のこととして祝福していて、琉華も徐々にそう考えるようになっていく。その過程を詩としか言えない映像で表現する。登場人物の言葉は日常の中で発せられたと考えると不思議だが、ポエトリーリーディングだと思えば違和感が無かった。
アニメーションは動き方に歓びを感じるものだけど、この映画での動き方の凄まじさと言ったら無い。日常風景も1コマ単位でひたすら繊細な動きをしていて、目が離せない。表情豊かに動く水の面白さも凄い。後半の『ファンタジア』のようなブッとんだアニメーションも、観客に体験として爪痕を残そうとするような気迫を感じた。そのために、音響も相当気を使っていた。アニメーションの映像表現として、『スパイダー・バース』に勝ち得る可能性のある映画だと思った。
宮崎駿の感想も聞いてみたい。
『ゴジラ キングオブモンスターズ』(マイケル・ドハティ監督)を観た。
まず、監督とハリウッドに感謝。ツッコミどころや怪獣達の愛嬌も含めて、ちゃんとゴジラだった。音楽に顕著だったが、ゴジラシリーズへのリスペクトに溢れていて、びっくりした。ゴジラはともかくモスラの登場曲まであんなに堂々と使うとは…!ハリウッドが作ってて立派な映画だったけど、B級感は健在だったのが面白かった。ゴジラからB級感は消せないらしい。
一番驚いたのだけど、ラドンがこんなにカッコ良かったのは初めて見た。
芹沢博士は最期以外ほとんど傍観者で、なぜ怪獣を保護しておきたいのかわからないのが、平成ゴジラシリーズを思い出させた。MONARCHの無能さや不要さも同様だった。世界的な視点と個人的な視点の混同もそうだと思う。アレってセカイ系の走りだったのかな。
エマのあの意見って他の作品でもよく見かける気がするんだけど、何だっけなあ、とずっと引っかかっていた。エマの通信に挿入された映像には笑った。
怪獣達のバトルはものすごくカッコよく描けてるんだけど、主人公や人間に魅力が無くて観てるのがしんどい(主人公がびしょ濡れのシーンが多いのは面白い)。でも、3分に1回くらいの頻度で怪獣が出て全く飽きないように作ってあって、そこはハリウッドらしかった。キングギドラが十字架と一緒に咆哮するシーンとか、カッコよく描かれてた。
それと、これは仕方ないことだけど、吹替で見た結果、田中圭の声が主人公に合わな過ぎて残念だった。もう少し年配の太い声が良いと思う。単なるミスキャストであって、田中圭は悪くないが。木村佳乃と芦田愛菜先生はさすが。
6/9
『くすぐり』(デイビッド・ファリアー&ディラン・リーヴ監督)を観た。
以前、松江哲明氏が勧めていた頃から気になっていたが、ラジオ番組『アフター6ジャンクション』でも取り上げていたので、ようやく観てみた。
このドキュメンタリーで監督が戦っていた相手は、一貫して気味が悪い。観終わった今でも、あんな得体の知れない巨悪が存在するのか、と疑いの気持ちを少し持ってしまう。
その疑いの原因はカッコ良すぎる映像にも少しあるだろう。構図がカッコ良すぎる風景の頻繁な挿入が、ドラマ的に見えた。また、イメージ映像や再現映像の多用も同様だった。『フリントタウン』を観た時にも思ったけど、ドキュメンタリーは劇映画に近づいているのが主流なのかな?
映像は全体的に凝っていて、人をくすぐる映像をエロティックに見えるようにする工夫にも驚いた。画角を限定した撮影とスローモーションと音楽を使えば、十分にポルノ的になるのか。
この巨悪が存在している前提での感想を述べるなら、監督二人があらゆる脅しに屈せずに戦い続ける姿が凄く良かった。こういう人達がちゃんといることの頼もしさと、脅しにすぐに屈してしまいそうな情けない自分が、はっきりと認識できた。少しずつでいいから、自分も勇気を得て変わっていきたい。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(アンソニー・ルッソ&トニー・ルッソ監督)を観た。
ようやく観られた。エンド・ゲームから遡っての復習の一環という感じ。
最大の見せ場はアベンジャーズ内での内輪揉めシーン。あんなに入り乱れてるのに、全員の能力をどれも魅力的に紹介した上で、戦況をわかりやすく描写していて素晴らしかった!何回も観直した。
その中でも、特筆すべきは、アントマンとスパイダーマン。アントマンのあの戦い方は、やはりアベンジャーズにも通じるんだという嬉しさと、あのホークアイとの協力プレイの面白さ!マスクを脱ぐとタダのおじさんという愛嬌がまた良い。スパイダーマンはあの可愛さ!少し甲高い声でたくさん喋る少年がちゃんと強いというギャップもまた良い。
全体的にアベンジャーズの存在意義を問い直すような重いテーマを物語の軸に置いているのに、展開はテンポよく進む。強大な敵を設定せずに飽きない展開を作っているのも、とても巧い。「アベンジャーズを国連の監視下に置くかどうか」で彼らは内輪揉めしていくわけだが、もう一つの重要な要素として『復讐の連鎖』がある。ソコヴィアで起きた悲劇(『エイジ・オブ・ウルトロン』)の被害者による復讐、父親を殺されたブラックパンサーによる復讐、両親を殺されたトニー・スタークによる復讐。どれも個人的な復讐・報復(revenge)が悲劇を拡大している。社会正義による復讐・報復(avenge)は存在し得るのだろうか。おそらく存在しない。なぜなら、世界に絶対的な正義が無い。MCUもそういう複雑な世界を描いていると決定的に宣言した、勇気ある作品だった。
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5/10
『ヤング・ゼネレーション』(ピーター・イェーツ監督)を観た。
素晴らしい青春映画。CUTTERSの白Tの眩しさが忘れられない。
まず、冒頭のダラダラとした会話から、いきなり石切り場のプールに飛び込む一連のシークエンスからして、引き込まれた。石切り場の画の強さも凄いが、それに至る映像が常にバッチリかっこよく決まってる。
主人公のデイブの独特のキャラクターが良い。あの好きなものに打ち込む心の強さと、その心を持ったままの挫折。周りの友達も、みんな辛い目に遭っているそれぞれのエピソードがまたグッとくる。
そして、最後の大決戦。
主人公が最後の勝負に、お金でも恋愛でもなくプライドだけをかけているというのが、観ててたまらない気持ちになる。
あの時代に自転車をあれだけ追えていて、臨場感溢れる映像を作っているのも凄い。最後の長回しの緊張感も最高。『みんな本気でペダルを漕がないといけないけど、ラストシーンは決まっている』と言う難しそうな演技が、とても上手くいっている。
あの後、みんながどうなったのかはわからないけど、あの一瞬に賭けた力強さに心揺さぶられる。
5/6
『マネーモンスター』(ジョディ・フォスター監督)を観た。
Netflixから奨められなければ観なかっただろう。ジョディ・フォスター監督で、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが競演、という豪華さに釣られた。
何となくジョディ・フォスターは政治的主張や社会への問題意識がしっかりあって、それを映画にするタイプだろうと予想してたけど、意外とエンターテインメント要素が強くてわかりやすく楽しめる映画になっていた。
どんなに世界の情報技術が発展しても、少数の人間が富を独占しようとすれば、世界が良くならないのは自明だろう。金持ちは儲けて、愚民は踊らされるだけなの?という問いかけがある展開を途中から期待していたが、そこまでの問題意識は感じなかった。
最後まで見て「金持ちの蛮行を許してはいけない」という当たり前の結論は見えた気がしたけど、愚民を踊らせる人間は無反省に見えた。これは社会への諦念なんだろうか。民衆が踊らされたがってるというのか。
途中から既視感のある映画に思えて調べたところ、自分が『マッドシティ』という映画を思い出していたとわかった。立てこもり犯とTVが共犯関係を結ぶあたりでの連想だったのかもしれない。最終的に被写体がコンテンツ消費されるような後味からは『トゥルーマン・ショー』も感じた。
このTVショー司会役のジョージ・クルーニーは、めちゃくちゃハマり役でよかった。あの腰の動きの滑稽さ。ジュリア・ロバーツの聡明さも時代に合っているとは思う。
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5/2
『メッセージ』(ドゥニ・ヴィルヌーブ監督)を観た。
美しい映画だったに違いない。音質も画質も残念な環境で見てしまい、かなり後悔した。Blu-rayとか買っても良いかも(特に場面ごとに盛り上がる音響が凄そうだった)。
最初、主人公の抱えている過去が提示されているのかと思って観ていたが、それは安易過ぎた。俺は謎を謎だとも認識できていなかった。物語の核となる謎の説明と、世界存亡を賭けたスリリングな展開を、完璧に同時に提示するのが凄い。美しい思い出が、そのまま未来に繋がるという映像の作り方には驚愕した。時間芸術と言われる映画への挑戦でもあるだろう。やはり時間が直線的に進むというのは、産業革命以降の西洋思想に過ぎない。
主人公の全てを受け入れて進もうとする強い意志が、とても気高く美しかった。
きっと原作はなかなか映像化が難しい作品なのでは、と想像している。宇宙生命体による影響の描き方は今まで観たことがない斬新なアイディアだった。小説での表現を確認してみたい。
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5/1
『ニンジャバットマン』(水崎純平監督)を観た。
手書きとCGをうまく混ぜて迫力あるアクションを表現する手法から、最近の日本で作られている作品らしい印象を受けた(『進撃の巨人』などを想起した)。アクションは面白いシーンも多かった。
途中のジョーカーとハーレクインが農作業してるシーンはかなり湯浅政明っぽかったけど、クレジットがあるのかどうかはよくわからなかった。
あのいかにも日本的な合体ロボ展開は、突き抜けていてギャグとしても良かった。
ストーリーライン自体は王道だった。突飛過ぎないように、見やすくするための配慮なのだろう。
企画は新しいはずなのに、映像として『スパイダーバース』ほどの斬新さを感じなかったのは、日本のアニメを見慣れてるせいだろうか。
4/29
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(アンソニー・ルッソ&トニー・ルッソ監督)を観た。
気持ち良く終わらせてくれて、ありがとう!劇場で観て良かった。
いろんな監督がいろんなキャラクターを描いてるのを、よくぞあんな風にまとめ上げた。MCUはこの二人の監督がいなければうまくいかなかったに違いない。
全部観てたら、もっと感慨深かっただろう。もっと追えていたら…と後悔すらした。今までの作品を振り返るような展開の作り方も、見事としか言いようがない。ああ、全部観て確認してたい。
物語として素晴らしいと思ったのは、過ぎてしまった時間を受け入れながら、より良き世界を目指すところだった。もしくは、敗北を受け入れた上で復讐(アベンジ)を目論むところ、というか。ご都合主義的に時空を改変するような流れしか想像出来てなかったので、その点は素直に驚いた。やはり制作者達は人類の力を信じている。
MCU全体としても、円環が閉じるような終わり方をしているところも良かった。
アイアンマンとスパイダーマンの擬似父子的な関係性は、前作からより強調されていて思わず泣きそうになった。
ラストシーンにはちょっとタイムパラドックスを感じたけど、まあ、あそこを清算したかったんなら仕方ないのか。
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4/28
『アントマン』(ペイトン・リード監督)を観た。
想像してたより凄く良かった。
犯罪者に堕ちてしまいそうなかなり普通の人に近いおじさんが、ヒーローとして人生を再起するまでの成長物語として、わかりやすく面白く描かれていた。
小さくなる能力だけでヒーローが成り立つっていうのが想像できてなかったけど、戦闘シーンを観れば、ちゃんと能力を活かした斬新な戦い方がカッコよく描かれていた。ミクロの戦闘と肉眼での体感をギャグ的に見せるのも上手かった。
ミッション・インポッシブルを意識した潜入シーンもちゃんと緊張感があって面白かった。3バカトリオがシリアスを乱すギャグはかなり重要だった。
父と娘をキーワードにした人間関係の作り方も良くて、それのおかげで物語全体を見通して展開が本筋からズレないようになっていた。
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4/27
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(アンソニー・ルッソ&トニー・ルッソ監督)を観た。
うおー。アガった!
これまでMCUの良い客では無かった俺でも、ヒーローたちのファーストコンタクトや協力バトルには、漏れなくグッときた。特にサノスVSアイアンマン他の戦いが良かった。ドクターストレンジのサポートが良い。今まで何本くらい観たのだろう。この映画を観てると、他のもちゃんと観てみようと思えた。みんながどうやってヒーローになったのかに興味が湧いてくる。
いろんなネタバレをうっすら聞いたり、ある場面を少しだけ見たりしてたのは残念だった。純粋にこの衝撃を受けたかった。
今までのアベンジャーでさえスケールが地球規模で大きくなり過ぎてた気がしてたのに、今回は全宇宙規模になっていて、ついていけるのか心配していたが、めちゃくちゃわかりやすくストーリーが進行するので感心した。監督のまとめ力凄い。惑星を行き来するところは、スターウォーズに似ていた。
あのサノスのキャラクターも良い。あの変な孤独感を抱えながら、まっすぐ狂気を推し進める悲壮な姿には魅了された。
そして、葬式のようなあのラスト。いやー、エンドゲーム見たくなるでしょう。逆転してもらいたくなる。
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4/12
『スパルタンX』(サモ・ハン・キンポー監督)を観た。
素晴らしきカンフーバカ映画。悲哀はゼロで、ずっと笑いとアクションをやってた。
ジャッキー・チェンのアイドル性は凄い。ベビーフェイスなのにムキムキでとんでもない動きをする。表情も豊かだ。サモ・ハン・キンポーのコメディアンとしての能力にも驚く。あの体格であれだけ動けるということ自体がギャグになっている。表情も常に面白い。急カーブで無駄に車から落ちたシーンにはかなり驚いたのだけど、その後、普通に家にいたから、そのシーンの無意味さに爆笑した。そして、監督が彼自身であることにも笑った。作品全体のギャグは吉本新喜劇を連想するようなベタさだった。これなら万国共通で笑えるのかもしれない。
この映画で最初に気づいた面白いことは、スペイン人も含めてみんな広東語を喋ってたことだ。違和感凄すぎ。これで公開したんだろうか。「考えてみりゃ、スターウォーズだってみんな英語話してるの変だもんな」っていう違和感を久々に思い出した。
しかし、何と言っても体張りまくりのカンフーが素晴らしい。まずは、アクションの多彩さとそのキレの良さ。スケボーを使った食事サービス、走るバイクへの飛び蹴り、フェンシングなど、見ててまるで飽きない。危険を省みない命がけのアクションの連発にも驚く。車はとんでもない転がり方をするし、みんな平気でどんどん高所に上っていくし、前方に身体ごと飛び込む動きは最早普通だった。
ストーリーを追うと、わけわかんない場面転換があったり、省略し過ぎな編集があったりするのだけど、それも愛嬌に思える愛らしさがあった。特に、サモハン演じるモビーがトーマスやデビッドと知り合いであるという展開に驚いた。その事実は3人が会うシーンで初めてわかるのだけど、事前にそういう話をしてほしい!
4/5
『アラジン』(ジョン・マスカー&ロン・クレメンツ監督)を久々に観た。
アラブ世界を舞台にしてはいるが、思った以上にアメリカナイズされた映画だった。
ハリウッド的アクションと、男女逆転したシンデレラストーリーを詰め込んだ当時のディズニーの王道。この恋愛至上主義は、この時期のハリウッドでは頻発してた気がする。アクションでもサスペンスでも恋愛成就をゴールにしていくようなストーリーが多かったかも。現代の日本でもその部分を踏襲した『海猿』とか『コード・ブルー』とかあるけど。
そんな中、スタンダップコメディ的に突入してくるジーニーが、過激に物語にアクセントを加えていた。彼がいなければ観てられなかった。
当時わかっていなかったけど、トラの顔の洞窟とかでCGを多用していたことに改めて驚いた。
魔法のじゅうたんの飛翔シーンは、『ピーターパン』と比べると視点の演出やスピード感の魅せ方などで、かなり進歩していた。
また、魔法のじゅうたんは相当飛ぶのが早いらしいと初めて気がついた。短時間に中国まで行っているのはギャグ的でもあるけど、当時の知識の無さでは気づけなかった。
全体的に、ハリウッドの実写映画の影響を受けていたように感じた。
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3/30
『スパイダー・バース』(ボブ・ペルシケッティ&ピーター・ラムジー&ロドニー・ロスマン監督)を観た。
まだまだ見たことない映像って作れるんだな、といたく感動した。後世に語り継がれる偉業。手書きとCGを織り交ぜているらしいとは聞いていたが、あの映像の作り方は全くわからなかった。ブルーレイ出たらメイキングを見たい。フルアニメーションにリミテッドアニメーション混ぜてるとか半端ない。
吹替にして良かった。妻に言われて納得したが、字幕に割く情報量が勿体無い。見たことない映像が怒涛の量で迫り来るのに、見づらくないというのも素晴らしい(これも妻が言っていて納得したが、『仮面ライダービルド』の映画のクライマックスシーンと比較してもそれは明らかだった)。アクションシーンは実写映画の動きを参照した上でアニメらしく作り変えている感じがした。
そして、興味を持続できる映像になっているのも凄い。それは映像の作り方だけでなく、脚本の力に依るところも大きい。とっ散らかってしまいそうな何でもありの設定を持ってきているのに、上手にマイルスの成長をメインとしたストーリーに集約しているのが凄い。その上で、ハリウッド的な伏線回収もバッチリやっていく。
キャラクターが魅力的に描かれているのは、監督の演出の力でもあるだろう。コミックで説明するやり方もすごく巧い発明だった。スパイダーマン達のキャラを魅力的に描きつつ被らないようにしているのも気が利いている。スパイダーマン特有のおしゃべりなギャグもちゃんと笑える。
マイルスの黒いスパイダーマンは完全に新しいスパイダーマン像を確立していた。
何度も見返したくなる傑作。
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3/15
2〜3回目のトライでようやく最後まで観られた。真っ暗な状況作って集中力高めなきゃ観てられなかった。
所謂古き良きヨーロッパの映画という感じだった。想像してたより暗い映画に思えたのは、戦争の影響が見え隠れしていたからだろうか。スペインの農村の雄大な景色は、美しいけれど、『荒涼』という言葉が似合う寂しさだった。時折流れる素朴な音楽には、海外に来たような旅情を感じた。
イサベルの行動も、無垢で無表情なアナも、終始不穏さを醸し出していた。戦争のメタファーやアナロジーが埋め込まれている空気は感じた。
アナは美しい子供だった。フランケンシュタインの怪物でさえも傷つけるのを躊躇うイノセンス。その美しさに説得力があった。
また、観たばかりだからかもしれないけれど、作品の雰囲気が『ROMA』に似ている気がしていた。スペイン語圏だからだろうか?家の作りや子供たちの生活環境も似ていた気がした。
3/13
『アトランタ』(第1シーズン)を観始めた。
3/8
『SING』(ガース・ジェンニングス監督)を観た。
とにかく力技の脚本で、超テンポよくハッピーエンドに向かうファミリー向け映画。歌の力を信じる(ことで問題が解決する)というテーマから、『天使にラブソングを』シリーズなども思い浮かぶ。そのため、ずっと音楽が鳴っているが、それはちゃんと映像に合っていたし、吹替でも歌はバッチリだった。
バスター・ムーンを一応の主人公には設定しているが、世間一般からは少し外れている沢山の動物達の群像劇になっている。それぞれが全く違う悩みを抱えながら、同じタイミングでピンチに陥って、同じタイミングで復活するようになっている脚本の設計が素晴らしい。しかし、その反動として、バスター・ムーンの人物造形が、反社会的に見えるくらいに好人物から逸脱してしているのは気になった。脚本にキャラクターが従属してしまっている。
映像も面白くて、ディズニーやピクサーやドリームワークスとかのフルCGアニメと違うなと思ったのは、実写で使う映像手法を多用している点だった。具体的に言えば、歌っているキャラクターの口元に寄る映像や、タイムラプス的な映像は、フルCGアニメでは初めて見た気がする。
水の表現なども実写っぽくて、自然現象に関しては、リアル路線のようだ。
同時に、フルCGアニメならではの、実写では不可能なカメラワークもうまく使っていた。冒頭のカメラの高速移動は話のテンポをよくしていたし、カメラでは撮影不可能な位置で動かす映像には迫力があった。
次は字幕で観るのも良いな。
2/1〜3/4
『グッド・ワイフ』(第1シーズン)を観終わった。
古き良き海外ドラマの系譜だった。ER以降Netflix以前という時期を感じさせられた。
基本的には1話完結になっているが、検察、判事、刑事、FBI、依頼人などが何回も登場することがあるし、ピーターの裁判というメインストーリーも進めていく。
基本的には登場人物がみんな魅力的に描かれていて、ちゃんとそのキャラクターが動くことで物語が動く。アリシアの強さはずっとカッコイイし、ケイリーの軽薄な小狡さは意外とチャーミングになるし、低い声で笑うダイアンはどんどん人間くさくなっていく。でも、やっぱりダントツ飛び抜けてるのは、カリンダのクールな有能さだろう。もはやギャグ的ですらある。インド系という珍しいルーツも良いし、自分を語らない強さはいつもカッコいい。
多様性や性差別への眼差しはオンエア時には早かったんだろうが、今の時代にはよくフィットしている。
常に先が気になる作り方が大変上手くて、沼に引きずり込まれかけている。
3/1
メインストーリーはベタなのだけど(『柔道部物語』を連想した)、変わった演出をしているシーンが多々あって、不思議な魅力のある映画だと思った。
具体的に言えば、迫力のある撮り方と編集ができそうな相撲のシーンを、盛り上げたり溜めたりせずに終わらせていたり、緊迫した立ち合いのシーンにそぐわないクラシックのような呑気な(もしくは優雅な)楽曲をかけたりする。立ち合い自体は、息遣いなど含めてリアルには描いている。きっとテレビドラマなら、勝敗が決する瞬間はスローモーションと皆の表情を捉えたカットを交えて編集すると思う。よくよく考えれば、それはダサいのだけど。
他には、バストアップの画角で正面から撮って台詞だけ言わせて3〜4人に交互に喋らせるシーンが急にあって、何だこれと思ってたんだけど、あれは小津安二郎的な演出なのかもしれない。
竹中直人は若い頃から竹中直人だった。演技経験の浅そうな人が多くて、正子と春雄の棒読みにはビックリすることがあった。本木雅弘もまだ演技に迫力が無かった。
相撲という旧態依然とした体質の世界で、性別や国籍を問わない多様性を訴えるエピソードが盛り込まれているのは、先見の明と言えるのかもしれない。正子のエピソードは、「これが一番描きたかったのでは…?」と思えるほど丁寧な演出をしていた。ライバルとして用意していた相手を倒した後にもう一試合あって首を傾げたのだけど、この部分を描くためだったのではないだろうか(『SLUM DUNK』の陵南戦終わった後のインターハイを思い出した)。
田中の決断も、主人公の最後の決断も、成長をしっかり描いていて、グッとくる。
2/23
『ROMA』(アルフォンソ・キュアロン監督)をNetflixで観た。
贅沢な時間の使い方を予感させるオープニングに始まり、その予感通りに2時間続く豊かな映像は、どのシーンで停止しても、写真として額に入れられそうな美しさだった。
脚本自体は地味というか小さい感じだが、映像の美しさでずっと見ていられた。強く生きる女性の悲しい美しさ。どんな出来事があっても、主人公の感情を抑えた表情がグッとくる。
メキシコの「カラフル」で「明るい」イメージは先入観だったと気づいた。それへのアンチテーゼでもあったのかもしれない。
出来事を綺麗に追う長回し、カメラと被写体の間に重層的に入り込むもの、不穏な予兆や予感を伝える象徴的な映像。撮影と演出が素晴らしい。
また、モノクロ映画は色情報が無い分、集中を強いる気がするのだけど、この超精細なデジタルでのモノクロ映像はとんでもない情報量で、今まで見たことないものだった。
観終わってからメインビジュアル見直して、神話的な絵画のようだ、と気づいた。
この脚本でモノクロ映画のこの企画を映画化させてくれるNetflixはやっぱり凄い。内容も、監督が撮影してるのも含めて、お金のかかったインディーズ映画だった。
2/22
『センター・オブ・ジ・アース』(エリック・ブレウィグ監督)を観た。
圧倒的なアトラクション感に爆笑。ジェットコースターを体感するような映像や、タイミングよく現れる船などにそれを感じた。
調べてみたら、初めて本格的に3D上映に取り組んだ作品で、監督も『キャプテンE.O.』『ミクロアドベンチャー』を作った人だったと知って、ああ、これはあの3Dアトラクションを長編にしただけだと大変納得した。どおりで画面に向かってくるものが多いと思った。志向しているものが違う。
脚本も大変駆け足で、3人の登場人物に関係性らしきものがあるような前提で、アトラクション映像をご都合主義的な展開で繋いでいくだけの作りだが、まあ、これも90分に収めるには仕方ないのだろう。
何度もとんでもない事態に遭うのに悲壮感が無いので、ファミリームービーになっている。しかし、あの飛翔シーンはいくらなんでもやり過ぎでは。めちゃくちゃ爆笑した。
息子がいなければ見なかったと思うと、感慨深くもある。
2/16
『ブレンダンとケルズの秘密』(トム・ムーア&ノラ・トゥーミー監督)を観た。
久々にTSUTAYAでジャケ借りした作品。
始まってすぐに、『パワーパフガールズ』や『サムライジャック』を思い出した。キャラクターデザインや動き方がよく似ていた。あの独特の輪郭線とデフォルメ。しかし、それと対比するように、背景が有機的とでも言うような、美しく気持ち良い動き方をしていた。詳しく見たことがないが、おそらく『ケルズの書』の世界観をうまく表現していそうだった。それは、ミュシャの描く背景に似ているようだ、とずっと思いながら観た。
途中でかかるギターの音が美しい音楽は、作品の雰囲気にとても合っていた。オーガニックで土着感たっぷり。
バイキングの描き方が徹底して残虐で、人外の不穏さを醸し出していたのも良かった。
ストーリーはちょっとドラマ性が物足りない感じがした。何か元になる史実があったりするのだろうか。クロム・クルアハとの対決で、無理矢理見せ場っぽいシーンを作っていたが、その後のバイキング襲来からは為す術もなく皆がやられるだけで、観ていて辛かった。院長が頑なに砦を作ろうとした理由も、最終的に謝罪した理由も、ケルズの書の必要性も、あまりわからなかった。
2/10
CGがうまく使ってあるんだと思うけど、カンフーアクションはどこまでCGかわからないシーンもあった。あれは日本の特撮にも影響与えてそう。海外の人が思うカンフーを理解して、パロディとして批評的に使っていた。ギャグとしての馬鹿げたアクションもかなり笑える。
カメラワークも自由で、スクリューするように右に左に傾けるのも、片目への超ズームインも、大袈裟な表現として作品に合ってて上手い。
メインストーリーがわかりやすいからかもしれないけど、主観の移り方とかで無理をしていて独特だった。監督主観で始まったのが、いつの間にかシンがメインにスイッチするのとかちょっと不思議。普通にシンから始めて監督の話を挿入するのが王道の語り方だと思う。フェイントとかギャグなのかな。
そして、あのダンスシーンは今見てもわけわからな過ぎて爆笑。そこも主観を無駄に変えてて、その躊躇の無さが良い。
でも、やっぱり一番は兄弟弟子が全員覚醒するシーン。『鉄の頭』のあの映像から始めるのが最高!
馬鹿すぎる試合シーン見て『テニスの王子様』思い出してたけど、そうか、あれは『キャプテン翼』だな。ウィキペディア見て納得した。
小ボケがしつこく繰り返されたり、音楽も使った壮大なフリがあったりするのは、この監督特有なんだろうか。そのせいで、少し疲れて長く感じる。
それにしても、あの曲は強い。
2/2
『ウォーリー』(アンドリュー・スタントン監督)を観た。
上映されていた頃、無理にでも感動させようとするCMを見て敬遠してたけど、超傑作SFだった!
荒唐無稽に感じられる設定なのに、その設定の細部まで徹底的に突き詰めていて、破綻しないようにうまく作り込まれていた。この脚本は集合知で作ってるんじゃないだろうか。集団で何度もチェックしてる感じがする。伏線の張り方とその回収の仕方もやたらと上手い。
ロボット同士の感情の交感を美しく際立たせるために、最高の舞台としてのディストピア世界を徹底的に作り上げていた。
ディストピアなんだけど、キャラクターやロボット達のデザインがかわいいので、子供も観てられる。
ウォーリーのキャラクターがとにかく愛着が持てるように作ってある。あのとぼけたようなレトロな造形や、プログラムを遂行する健気さ、童貞っぽさすらある純情さ、親しみを持ちやすいmacの起動音。そして、ウォーリーの子孫にあたるであろうロボットのイブのあの洗練されたデザインは、アップル製品が進化の末に作り出した感じが面白い。
メインのストーリーラインは、ウォーリーとイブの恋愛に似た交流にあるんだけど、そのサブプロットとしてウォーリーが周囲に与える影響も観てて楽しい。落ちこぼれ達の奮起、人間達の再起。普遍的なテーマをSFでやっている。
宇宙遊泳ダンスのシーンは信じられないくらい美しい。
「このハッピーエンドはちょっとみんな楽観的過ぎない?」って感じてた不満を解消する映像の魅せ方と、そこから歴史が作られていくエンドロールのスマートさには感服した。
ウォーリーが大奮闘しているシーンで、3歳の息子が「ウォーリーがんばれー!」と叫んだ。字幕で観ていた。殆ど言葉がわからなくても伝わる映像になっているんだ。
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1/26
初めて観たのは小学生の頃だったと思う。当時は、ナウシカやラピュタやトトロと比べてわかりやすい冒険要素がないのが不満で、地味な映画だと切り捨てていたようだ。
しかし、改めて見直してみると、実に無駄無くテンポ良く進むストーリーの中で、大人には楽しめる程度に、言葉にしない微細な感情のやり取りが描かれていた。主に空を飛ぶことへのロマンと男のダンディズムがそこにはあるのだけれど、その表現はマチズモに陥るのを避けている。そのための工夫として、フィオや飛行機を作る女性達の活躍と、ポルコが豚であるということ自体のユーモアとチャーミングさがある。
ポルコはカッコいい。が、カッコよければカッコいいほど可笑しい。そんな二重の評価を同時に持たれるというだけで、豚がモテるのもわかる。
ポルコが豚になった経緯の説明がほぼ無いのも、子どもだった俺には不満だったが、今はこのマジックリアリズム的な手法にも面白さを感じられる。戦争との距離もうまく取っている。
ジブリらしいフルアニメーションの映像も素晴らしい。動いていない部分がない。ずっと動いている。
太陽が明るいイタリアの空と海も、ずっと美しい。夕暮れ時の空と雲も綺麗な色だった。
空を飛ぶシーンも最高だ。どうやって空を飛ぶシーンを創造したのだろう。きっと飛ぶ時に映像を撮ってもあんな風には見えない。資料にはならないと思う。まさにイマジネーションの産物ではないだろうか。
そして、この企画のスポンサーに日本航空が入っているのも面白い。世界恐慌の時期に飛行艇で飛び回っていた豚の物語に。ちゃんと説明したのだろうか。
1/19
こんなに古い白黒映画を久々に観た。最初は集中できなくて、登場人物も展開も全く頭に入って来なかった。しかし、徐々に映像に慣れてくると、めちゃくちゃ面白いとわかってきた。
登場人物がみんな個性豊かで、ちゃんと彼らの言動と関係性がドラマを動かすし、展開も多くて見ていて飽きない。
ロードムービー的要素、アクション要素、ラブロマンス的要素などが、無理なくバッチリ詰まった超娯楽大作だった。
特にインディアンの襲撃シーンは圧巻だった。馬に飛び乗るシーンも馬からずり落ちるシーンも衝撃的だった!映像も凝っていて、馬車から撮った映像や、地面に埋めて撮ってるシーンがあって驚いた。あの時代に、この撮影は斬新だったに違いない。
インディアンの表現や女性を扱うシーン以外は、全く古びていない。むしろ、その後の映画に通じるエッセンスがたくさん詰まっていて、2019年に観ても鑑賞に耐え得る大傑作だった。
1/15
『わたしは、ダニエル・ブレイク』(ケン・ローチ監督)を観た。
今イギリスに住んでいる人々の辛い状況と、それに対する政府や役所の対応の酷さを、大声で告発している映画だった。そのメッセージの強さは、頭を殴られたような衝撃だった。
物語は終始淡々と進む。この印象は、派手に動かないカメラと、ずっと一定に見えるワンカットの長さから受けるのかもしれない。長回しもテンポの速い編集も無い。最近珍しいこともあって、その誤魔化さない映像の魅せ方は逆に目を惹く。
主役のダニエル・ブレイクの生活がリアルに丁寧に描かれていく。裕福ではないが、慎ましく健やかに生きていたようだった。
政府からの給付が滞るダニエルと、シングルマザーのケイティの生活は極貧に向かっていく。特に、ケイティが気力を失っていく様子はショッキングだ。そんな中で、助け合う人々の姿はその分感動的だけど、この事態は政府が救うべきじゃないのか。
極貧になっても、服装や内装からは日本的な貧相さが感じられない。類似性が指摘される『万引き家族』を思い出すと、それは明らかだった。むしろ、シャツとセーターの合わせ方とかオシャレだ。それは文化の違いで済ませる問題ではなく、彼が人間としての尊厳を大事にしていたからだと最後まで観るとわかる。
寝室税とか本当に驚いた。でも、日本も似たような方向に向かってて、暗澹たる気持ちになる。
途中、ダニエル・ブレイクに皆が喝采を送ったように、見事な告発を遂げた監督に喝采を送りたい。
1/13
『ピーター・パン』(ウィルフレッド・ジャクソン&ハミルトン・ラスク&クライド・ジェロミニ監督)を観た。
2019年に見ると、インディアンに対する人種差別的表現も、ウェンディに対する男尊女卑的な扱いも、なかなか強烈だった。
ピーター・パンを通して、『少年』という存在の邪悪さが際立っていた。原作のテイストからだいぶ削ぎ落としたのだろうが、これ作った人達は子どもを好きそうに思えなかった。
間抜けなフックが憎たらしいピーター・パンにやられるシーンのあの滑稽な残酷描写は、『ホーム・アローン』に繋がっていると思った。
しかし、全編通して映像に隙間が無い。ずっと何かが起きている。何かが動いている。アクション、会話、ギャグのハイテンポな連打。目が離せなかった。
そして、冒頭の飛翔シーンは、イマジネーションがまっすぐに体現されている最大の見せ場だろう。それは宮崎駿作品に繋がっていそうだった。「You can fly!」と連呼される音楽の中で子供達が飛び回るシーンは圧倒的過ぎて、もう笑うしかなかった。
1/12
『ミッション:インポッシブル』(ブライアン・デ・パルマ監督)を久々に観た。
こんなにクラシックな映画って感じだったっけ…。冒頭のプラハの場面とか、霧立ち込める街で起きるミステリーっていう感じで驚いた。スローモーションで水が押し寄せるシーンも、妙に幻想的で重厚さがあった。
パソコン系のテクノロジーは2019年に見ると時代を感じてしまう。
シリーズの他の作品に繋がっているのは、不可能に思えるミッションをギリギリでクリアする部分と、無茶なアクションだった。ラストシーンの賭けでしかないアクションには笑った。
ミスリードの多用と根拠が微妙な犯人推理のシーンは、この脚本でいいのかなー、という感じだった。
一番驚いたのは、昔観た時は重要な役の印象だったジャン・レノが結構ミスをする極めてダメなヤツだったこと。
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1/2
『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』(山口恭平監督)を観た。
お祭り映画!
一番の見どころは美味しい場面で登場する佐藤健a.k.a 良太郎。俺もオダギリジョーや要潤や水嶋ヒロや菅田将暉や瀬戸康史や福士蒼汰や竹内涼真がライダーだったこと忘れないよ!出し方もうまかったし、メッセージも良かった。他のライダーは少しずつ特徴を触る感じ。時間の都合だろう。それでも、上映時間長過ぎだと思うけど。
平成ライダーズが暴走族のごとくバイクで走り回る姿には笑ってしまった。
仮面ライダーが虚構として存在するというメタ構造を取り込んだこと自体は面白いが、あんまり上手くやれてない感じはあった。更に、ジオウ自体がかなり無茶なタイムパラドックス抱えてそうな(頭痛くなるのでちゃんと検証はしていない)ところに、電王まで時空を突っついちゃうのでストーリーはぐっちゃぐちゃになってた。そして、CGだけで展開される戦いはゲームムービー見てるのと変わらないので、やっぱり良くない。特撮は身体性にこそ緊張感があると思う。