時間が無いのもあるけど、こんな風に感想の記録をつけるようになって、映画を観る本数が減った。
「観た後、感想書かなきゃ」と思いながら観ると疲れるし、そう思うと観るのが億劫になる。「まだこの映画観た感想がまとまってないのに、次の映画見れないな…」とか思うせいで、続けて2本観たりできなくなった。
馬鹿だ。映画を観ることのハードルを自分で上げてしまっている。あくまで、映画は娯楽の一つだろ。
それに、大上段から偉そうに批評ぶった文章書く必要は無くね?と思うけど、でも、書くとこういう文章になっちゃうし、書きたいんだからどうしようもない。
以下、いつも通り、遡る形での記録となる。
多分、ネタバレといわれる事故の危険性はある。観てない作品は流し見をお勧めする。
6/14
やっと観た。公開から結構時間が経っているけど、未だにTwitterなどでネタ化されていて、もはや一般教養のようだと感じたので、少しの義務感も込みで観た。
ゴジラの無感情のビー玉みたいな目と、うねうねとしたクリーチャー感たっぷりの気持ち悪い動きが面白かった。ゴジラ対自衛隊の迫力ある戦闘シーンは劇場で見るべきだった。
また、長谷川博己、石原さとみ、市川実日子、高橋一生が演じていた超デフォルメされたキャラクター達はアニメみたいで笑えた。しかし、それが行き過ぎてるようなシーンもあって、あまりにアニメっぽい、というかエヴァっぽいシーンは笑ってていいのかな?とも感じた。アニメっぽいと自主映画くさく感じるんだなというのは初めて気づいた。
じゃあ、アニメだったら良かったのかというと、それも違う。実写だったから描ける迫力が確かにあった。
とにかくセリフに情報を詰め込んでいて、その話すスピードは全く現実に即していなかったが、それで、何言ってたのか聞き直したくてリピーターが多かったのかもしれない。手などのディテールにズームインする映像や、エヴァっぽい風景を差し込むような編集は、テンポが良過ぎるくらいで、見ていて飽きなかった。
『シン』は新で真で震で神で進でsinなのだろう。思いっきり震災や現政権を想起させた上で、現実とは異なる理想の世界をエミュレートしていた。
それは、庵野秀明らしからぬ希望を描いているようで、その事実自体が感動的だった。
5/13
『M★A★S★H マッシュ』(ロバート・アルトマン監督)を観た。
オールタイムベスト級に最高の作品だった。戦争映画では一番好き(そのジャンルに入れるのも微妙かもしれないが)。戦争は悲惨で理不尽で馬鹿げている。ユーモアで戦う主人公達は、戦争にもそれに付随する権威にも屈さずに、メチャクチャ馬鹿なことをやりまくるから思わず笑ってしまうが、同時にその姿勢がとてもカッコいい。ドナルド・サザーランドの色気も、エリオット・グールドの皮肉屋な雰囲気も、本当に良い。
観始めた時は、状況が全くわからない。野戦病院にいきなり放り出されたような混乱を覚えるけど、見方が分かればその後はもうずっと楽しい。セリフが重なりまくってるあの映像は、異常事態が日常生活になってしまっているというおかしな空気を伝えてくれる。
途中、ホットリップスへの仕打ちはやり過ぎてるようにも見える。女性蔑視というか、軽視というか。その後の展開でホットリップスと仲良くなろうとも、そこだけはあんまり好きになれなかった。そこは撮られた時代を反映しているかもしれない。
そんな風に女性への眼差しはまだ差別的な気もするが、階級社会の嫌い方も、人種差別しない実力主義のあり方も痛快だった。
前代未聞の洒落たエンドロールにも笑った。このエンドロールだけ見ても、この作品の革新性がわかる。
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5/3
『スリー・ビルボード』(マーティン・マクドナー監督)を観た。
観ている間、多くのことがわからない。それが楽しかった、と観終わってわかる。
まず、どんな映画なのかわからない。だから、見方がわからない。サスペンスか、推理物か、ヒューマンドラマか、ひょっとして、コメディか。どの要素も入っているが、ジャンル自体はどうでもいいことにも思える。この映画において誰が重要なのかもわからない。現実と同じで良い人悪い人というのも簡単にはわからない。次に何が起きるのかもずっとわからない。とりあえず、最初の一回は何も知らない状態で、ただただ翻弄されながら2時間見るのが一番幸せだと思う。
この映画において、全ての事象が人の行動だけに作用されていて、誰かが何かを期待して行動を起こすが、それが必ず行為者の意図とは違う影響を及ぼしてしまう。それは広告の原理のメタファーにもなっているようだった。
非常に多くの要素を詰め込んでいて、散漫になりそうな物語をうまくまとめている脚本は凄い。しかし、結末まで考えた上で、伏線は張りつつ、展開をほのめかさないようにする演出も上手い。
フランシス・マクドーマンドの演技はやっぱり最高レベルで強烈だが、脇を固めるサム・ロックウェル、ピーター・ディンクレイジもめちゃくちゃ良くて、結末の状況から逆算した演技だと思う。それと、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの優男っぷりが好き。どの人物も魅力的に描かれていて、簡単に憎ませてはくれない。
背景に『ファーゴ』の世界も感じるけど、新たな傑作だった。
5/2
『この世に私の居場所なんてない』(メイコン・ブレア監督)を観た。
シリアスとギャグが地続きに展開を作っていて、全く先が読めず、驚愕と爆笑が交互に発生したり、同時に発生したりする。その脚本が良く出来ていて、世の中の理不尽に振り回される主人公が、ある事件をきっかけにして世の中に立ち向かい始めて、成長(あるいは変化)するという普遍的なストーリーを、飽きさせない展開で面白く描いていた。特に変わっているのは、主人公の行動原理が『善く生きたい・善く生きるべき』という根源的ではあるが、抽象的で描くのが難しい動機になっている点で、それをはっきりと具体的に描いているのが凄い。難しいので、普通は恋愛とか復讐とか友情を持ち出す気がする。そういえば、『川の底からこんにちは』も思い出した。
演出も良くて、一見状況に合わない音楽が徐々に映像に合っていくシーンや、もう混沌過ぎる展開になって「うわ~」って見てたら、ひゅっと俯瞰でひいた映像で状況を見せて笑わせてくれるシーンが好きだった。冴え過ぎたキャラクターがいなくて、行き当たりばったりでストーリーが転がるのもワクワクして良かった。
光の中で飛ぶ無数の羽虫、夕暮れの陽光の中で隣に誰かがいること。一連の映像が世界を肯定する力も強かった。
この世に私の居場所なんてない | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
4/21
『ブロンソン』(ニコラス・ウィンディング・レフン監督)を観た。
観始めた第一印象は「赤い」。やはり後の『ドライブ』や『オンリー・ゴッド』にも繋がる、闇に光る印象的なネオンサインのような光があって、それが赤い。
そして、異様にグラフィカルな画面構成が他の作品より強く意識できて、人物と物体がシンメトリーな配置であることが多いと気づいた。先に挙げた2作もそうだったのかもしれないが、今回ははっきりとしたストーリーが無かったので、それが際立ったのかもしれない。
暴力描写はやはり圧倒的で、トム・ハーディの怪演が素晴らしかった。強さの漲る背中と、振り回すために溜めた拳のあの迫力は、本当に殴ってるようにしか見えなかったが、実際はどうなのだろう。暴力衝動に本当に理由が無いように描かれるヤバさも良かった。
他にも、話の流れぶった切ってたけど、精神病棟の奇天烈過ぎるダンスシーンは爆笑した。
それと、Netflixはモザイク入れないんだな…。トム・ハーディの股間をあんなに見ることになると思ってなくて、ビックリした…。
4/11
Netflixで『ダムネーション』(原作・制作 トニー・トースト)シーズン1を観始めた。
ダムネーション | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
4/8
『ジョン・ウィック』(チャド・スタエルスキ監督)を観た。
アクションシーンは斬新でカッコよかった。拳銃とサブミッションを混ぜた戦闘術(ガンフー?馬鹿なネーミング最高)は動きが全く読めなくて面白かった。キアヌ・リーブスのアクションは『マトリックス』とかとは全然違った。激しい動きをカメラはうまく捉えてると思う。極めつけはジョン・ウィックの拳銃と車を使った戦闘術だろう。あの発想は無かった。そして、実写でやるとは!マンガかアニメだろ!
プロは敵がどこにいるのかがわかり、どう動くのかがわかり、一瞬早く動いて対処できる。この動作が入念な練習の賜物に見えないことも無いが、そういう特殊能力として捉えるのが正しい楽しみ方だろう。
ジョン・ウィックVS大組織の引き金となる事件は、どうも飲み込みづらかった。プロでも油断してるとヤラレちゃうんだな、殺せば早いのにジョン・ウィックは殺されないんだな、とか思ってしまっては興醒めなので、没入しようと少し頑張った。
暗殺者ホテルやコインの話はやたらと漫画的に思えたが、ケレン味たっぷりで笑えた。
4/1
『ちはやふる 上の句』(小泉徳弘監督)を観た。
ティーン向け青春映画の決定版だろう。俺が何歳の頃でも率先して映画館に見に行く映画では無いが、見ればちゃんと感動出来る作りだった。食わず嫌いは勿体なかった。
原作を少し読んだことがあるが、原作の内容を大変綺麗に映画に落とし込んでると思った。持たざる者であるツクエ君を丁寧に描いて、太一を主軸に持って来るやり方は、下手なスポ根映画より全然感動出来る作りだった。
映像としても、スポーツとかで見るようなスーパースローを使った動きの緩急のつけ方が自然で巧い。漫画的なカラフルなイラストの挿入も無理がなくて良い。
そして、広瀬すずの美しさたるや。どの角度から撮っても、どのスピードで映っていても、どんな表情でも、白目を剥いても、崩れない。
3/4~3/31
Netflixで『親愛なる白人様』(原作・制作 ジャスティン・シミエン)シーズン1を観た。
黒人に対する人種差別は、ありとあらゆる場面に存在し続ける。生きているだけで黒人は差別にさらされ続ける。多少デフォルメされてる部分もあるのかもしれないけど、黒人にはそう見えている。
その前提があった上で、白人と戦うか、白人に順応するか、白人と協調するか、と常に選択を迫られている。しかし、どの選択をするにしても、皆には怒りが共通している。
恋愛、友情、SNS、パーティといった感じで大学生活を楽しく過ごしたくても、必ず人種差別の問題に突き当たって、その怒りと向き合うことになる。瞬間的には生き生きとして見える黒人もいるが、やはりそれは幸福なことではない。
とはいえ、大学生っぽい描写も多くて、ドレイクやジェイムズ・ブレイクみたいな有名人の名前(主に音楽関連)も飛び交ってて、それが面白い。あまり差別問題に詳しくない俺にはコンテクストが読みきれてない固有名詞のやり取りも多いが。
メールやSNSの画面にそのまま出る表現はそろそろ確定っぽいな、とふと思った。違うドラマでも似た表現をしていた。
全体的に編集も脚本もテンポよく進行するが、シーズン中、途中ダレてる感じもある。しかし、第1話、第5話、第10話でドラマの象徴的な話を持って来て、興味を持続できるようにしている。特に最終話のカオス描写が素晴らしくて、あの状態になるように最初から逆算して作っていたのでは、と思える出来だった。
親愛なる白人様 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
3/26
『キング・オブ・コメディ』(マーティン・スコセッシ監督)を観た。
怖過ぎて笑うしかないという状態を持続して観た。だから、コメディなのかな。
ロバート・デ・ニーロの狂人っぷりが怖過ぎる。あの不気味さと生理的な気持ち悪さ。そして、何しでかすかわからない感じ。人とうまく接することができなくて思い込みやすい点は『タクシー・ドライバー』に近いが、この映画で最も恐ろしくて特徴的なのは、妄想が映画全体を包んでしまっている構造で、それが凄まじい。
映画の序盤から主人公の妄想が入り混じるのだけれど、それは映像の加工等で区別しているわけではなくて、物語の文脈上突飛過ぎるので主人公の妄想だとわかる、という編集をしている。しかし、あるポイントで『妄想だと思って観ていたシーンがどうやら現実だった』となる瞬間が急に訪れる。その瞬間の気まずさがメチャクチャ恐ろしいし、むしろ妄想であってくれ、と願ってしまうほどだった。
そこから最悪の悲劇で喜劇の結末に向かうのだが、ラストシーンまで観ると、あれ?どこからか妄想だったのか?とまた疑わしく思える恐ろしさがある。
あの舞台でのジョークもどこまでが本当だったんだ?じゃあ、今まで見てたのも妄想?最後のシーンでの世間のあの反応はあり得ないよな?いや、最初から最後まで妄想か?と全てをひっくり返される可能性もある。そりゃ映画っていうものは、作った奴らの妄想みたいなもの(虚構)ではあるのだが…。と映画というフォーマット自体に対しても醒めてしまう不思議な体験をした。
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3/23
『キャビン』(ドリュー・ゴダード監督)を観た。
この設定を生かす脚本はこれなのか?徐々に謎を明かした方が面白くない?
ホラー映画のお約束(あるいはご都合主義)を逆手に取って、そのお約束には理由があった、という設定自体は上手いと思うけど、最初からその設定をぶっちゃけて進むと緊張感が無くて、全体的に興味が持てなかった。最初の1シーンは良いけど、その後しばらく若者のシーンだけで進めればよかったのでは?
途中の若者たちの活躍と舞台裏でのピンチをリンクさせるシーンは面白かった。また、終盤でホラー映画のお約束が起きないはずの世界にいるはずなのに、結局ホラー映画のお約束に飲み込まれていくような物語構造自体は面白かった。メチャクチャにし過ぎて破綻しているとは思ったが。全体的にバカ映画なのに真面目にホラーっぽくやってるところもあるのでどっちつかずになっていた気がする。
後で調べて、「全てのホラー映画がこう作られていた」と思えるメタ性が評価されてるっぽいことはわかったが、この映画固有の要素が強かったのでそういう風には思えなかった。
監督は『LOST』とかの脚本に関わってたと知って、かなり納得した。
3/16
『HIGH & LOW THE MOVIE』(久保茂昭監督)を観た。
最後の方、観てるのめちゃくちゃキツかった…。ドラマ見てないせいもあるんだろうけど、グダグダだろう…。過剰にデフォルメされたキャラクターと、ダンスをベースにした激しいアクションだけが詰まっていた。キャラの見せ場・アクションの見せ場・それらの複合的な見せ場をとりあえず繋いでいたのが、ストーリー。という従属関係になっていた。
達磨一家の登場シーンには爆笑したし、雨宮弟は普通にカッコよかったし、戦争開始の映像は入り乱れ方が素晴らしかったし、九十九のやられっぷりが激しくて良かった。
しかし、それ以外は見てられなかった。ずーっと音楽が鳴っているのだが
、それで演技力を誤魔化してる部分があるようだった。音楽が止まった途端に見てられない演技をしていることに気づいたりした。
そして、何よりコハクさんのやってることの意味が分からな過ぎた。ドラッグのせいと考えておけばいいのだろうか。そのせいで何のために対立してんのかよくわからないし、この戦争らしきものが、普通の喧嘩とどう違うのかもよくわからなかった。殺すのは無しなのね、警察は一応いるのね、みたいな。
コハクさんを説得するシーンの『回想→当時の台詞を踏まえてそのまま言う』みたいな流れのつまらなさにも驚いた。回想シーンもドラマの劇中であったようには見えなくて、この説得のために撮ったように見えて馬鹿らしかった。
2/17
『許されざる者』(クリント・イーストウッド監督)を観た。
古典的名作!きっと公開当時からそうだったに違いない。
昔ながらの西部劇を鑑賞したことが無いので詳しくはわからないが、物語の基本フォーマットはとてもわかりやすくて、俺の思うTHE西部劇だった。それでいて、殺人への逡巡や苦悩は現代的な脚色だと思った。最後まで観ると『非道な人間は殺してよい』という姿勢も見えて違和感も覚えるが…。
主人公演じるクリント・イーストウッドの『老い』の執拗な描写は普通に面白くて笑ってしまったが、物語の伏線として絶対に必要だったんだと観終わって納得できたし、感心した。作家と保安官のやり取りによる英雄譚の否定も、同じ伏線の役割を果たしていた。
終盤に向かって緊張感が増していく。西部劇らしい早撃ち対決が代表的だが、「誰が誰を撃つのか」という緊張状態に、かなり多くの工夫したパターンを作っていて飽きさせない。牢屋越しのあのやり取りには息を呑んだし、先の見えないクライマックスの迫力には圧倒された。
どうやって作っていったのかが気になって、特典のメイキングも観た。こんなに確認したのは久々だった。
ジジイになったイーストウッドは頑固で不器用で渋くてカッコイイ。