2016年に観た映画類の記録

12/29
ストレンジャー・シングス』(シーズン1)の4話を観た。進んでいるのに全然終わりにたどり着ける感じがせず、なおかつ面白いという奇跡のような状態を保っている。

12/23
ストレンジャー・シングス』(シーズン1)を観始めた。
とにかく先が気になるようにできている。キャラクターもそれぞれ際立っていて面白い。往年の浦沢直樹作品を読んでる感触に近いかもしれない。舞台となる80年代は名作揃いで、それらを直接の引用にしているのかはわからないが、それらの面白い要素をガンガン入れ込んでいて、今のところ作品になるようにバランスよくコントロールできている。影響や引用だと少しでも感じたものを挙げるなら、『AKIRA』『ツイン・ピークス』『E.T.』(スピルバーグっぽさ)『スタンド・バイ・ミー』『ビバリーヒルズ高校白書』などだろうか。現代では映像演出にもDJ的な素養が求められているのかもしれない。



12/24
ビル・マーレイ・クリスマス』を観た。
欧米人にとって、クリスマスという聖夜が特別なものである、ということがよくわかった。奇跡は起きるし、歌声は心に響く。ビル・マーレイの顔のもの哀しさは健在。



11/25
イップ・マン 序章』を観た。
カンフーにおける達人の決定版と言えるだろう。ドニー・イェンのまともに敵を見ないで全てを軽く受け流す、あの余裕が滲み出た所作が素晴らしい。物語自体はカンフーを世界の真ん中に置き過ぎてて、アホな世界観に思えた。戦争のせいで後半が全体的に暗いトーンになってしまうのに、やってることが前半を引きずっててなんか乗り切れなかった。しかし、無敵系のスターはつまらないといつも思うが、アクションに創意とスピード感があって、スティーブン・セガールなんかより断然面白かった。



11/5
スティーブ・ジョブズ』(ダニー・ボイル版)を観た。
音楽が多い、という先入観を持って観てしまったからか、音楽で興奮を煽る演出が気になった。特にラストシーンは映像の内容以上に感動を無理矢理煽っているように見えて、かなり醒めた。台詞の応酬の部分はソーシャル・ネットワークほどわかりやすくはないんだけど、観客にはわからない部分があるという点をコントロールしてるのがわかって、とても良かった。



10/27
ボラット 栄光なる国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』を観た。
楽しむべきは一般人への過激なドッキリ部分で、飽きずに魅せるために上映時間を短くしているし、パターンも多くしてるとは思うが、さすがに連続で見ると少し飽きた。単発で各パートを見れば、それは断然笑える。初見の人にわかるために作ったストーリー部分を見て、ストーリーに期待をしてしまった分は損した気分にはなった。



10/22
『ガンツ:オー』を観た。
映像としてはFFなどのゲームムービーの延長線上にある印象だった。しかし、わかりやすくそれらより優れていたのはスピード感を増大させる演出の巧さと、美男美女ではない登場人物の表情の豊かさだった(美男美女の表情が乏しく感じるのは現実に即しているのかもしれないが)。漫画が描いていた無機質に動くメカのギミックが超忠実に表現できている点は素晴らしかった。走ってる乗り物から思い切りスターウォーズの音がしたのは少し驚いた。



7/16
バッド・ルーテナント』を観た。
やっぱりニコラス・ケイジの顔は最高。今回はあの情けない顔のままイッちゃってるのが素晴らしい。それぞれが自分の利益をただ追求していくと、やはり善悪は関係無くなっていく。それは簡単に悪徳を肯定するわけでも無い。いろんな思惑が絡み合った結果、不思議な展開で主人公に都合良く事態は進むが、主人公を理解する人はどんどんいなくなっていく。思わず笑ってしまってから虚しくなるような、孤独の話だった。



7/2
インサイド・ヘッド』を観た。
感情は喜怒怖苛悲の五つで構成できるだろうか?足りない感情を考えてみるが、微妙なものを除けば確かにこれで事足りそうだ。脚本がよく練られている(当たり前だけど)。複雑な心(脳)の面白さを極端にわかりやすく描きつつ、一人の少女の成長物語にするという荒技に成功していた。この感情を作り分けるというアイディアも優秀だが、記憶の扱い方が特に巧かった。記憶が人格を形成するというのがわかりやすいし、あの触りたくなるインターフェースが見てて面白い。



6/28
アベンジャーズ』を観た。
興奮するためだけに脳を使える映画。アクションシーンは創意に富んでいて面白い。ヒーローはアクションでコミュニケーションを取る。それぞれのキャラクターの背景は想像で補ったが、補う必要も無さそうだった。このクロスオーバー企画は「他の作品を見ればもう少しわかるようになるかな」と思わせるのが上手いが、おそらく他に一作くらい見ても全ては補えないので相当な量見をなくてはいけなくなる。それはしんどい。



6/25
『サンドラの週末』を観た。
真っ先に、「作りたかった映画」だと思えた。脚本が素晴らしくて、「ボーナスを諦めて自分を復職させてくれと複数の同僚を説得するサンドラの週末」というプロットを知った時に、その説得にそんなにバリエーションにあるかな?と勝手に心配になったが、そんな必要は全く無いほどいろんなことが起きるし、逆に反復のもたらす力も感じた。即座に断られると、それ以上言葉を出せないのがリアルで、嫌な沈黙と微妙な表情までしっかり捉えている。電話の内容が聞こえなかったり、サンドラと他の人との関係がわからなかったりして、サンドラを傍観するような視点に観客を置く演出も面白かった。観客は観ることしか出来ない。サンドラの緊迫した呼吸と、厳しい表情で歩く姿は、生きる意志に漲っている。



6/24
おとなのけんか』を観た。
超緻密に作り込んだ脚本と、俳優達の巧みな演技の勝利。人物造形もそれを生かした展開もやたらと上手い。舞台っぽい内容だが、映像ならではの魅せる映像にもしている。他の家との関係にも、夫婦の間にも、男女間にも、溝はある。それを80分で露わにしていく。



6/18
『ザ・ゲスト』を観た。
『ドライブ』に似ているような印象を時々感じたが、総じて見れば全くの別物だった。痛さとプロフェッショナルさを兼ね備えたアクションシーン、強い人物の寡黙さ、ネオンっぽい夜のシーンなどが似てると思った要素なのだろう。アクションは『アウトロー』や『ボーン・アイデンティティ』などにも似ていた。あの外部から来た人が子どもを導く話は、引用のような気もしたが引用元は具体的にはわからなかった。そのガイドとなるデイビッドが善にも悪にもなりつつ、善悪を超えていく。その結果、映画のジャンルを横断して、共感も理解も度外視したフレディやジェイソンのようなキャラクターになる感じが面白かった。



6/11
『ワン・プラス・ワン』を観た。
やっぱり途中寝た。時代背景と制作背景がわかっていないと楽しめない作品なんじゃないか。ストーンズが『悪魔を憐れむ歌』を作る過程と黒人が革命を叫ぶ映像を混ぜ込む編集は、何を意図しているのか。ロックンロールも含めて黒人が搾取されたという事実を強調しているのだろうか?二つを配置して意味が生まれること自体が目的かもしれない。それと独裁者(?)に関する卑猥な文章は何を意味しているのだろうか?映像そのものより、どこかで読むであろう解説の方が楽しみだ。ストーンズを少し俯瞰した視点から捉え続けた映像と、廃車だらけの場所での黒人の革命を横にドリーしながら撮っている映像には、映像そのものの面白さも感じた。ラストの鮮烈で爽快なクレーンの映像はただただカッコよかった。



6/10
デッドプール』を観た。
この映画がヒーロー映画に持ち込んだ新しさは、創意に富んだ笑えるアクションと、パロディを含まないシニカルで自己批評的なジョークと言えるのだろう。特に後者は漫画やコメディ映画にあった手法だが、ヒーロー映画に入れ込んだバランス感覚が良い。そして、ギリギリでパロディにしないところで上品さを保っていると言える。映画において神として存在する監督のような視点に立つことで、映画の内外で主役となるデッドプールの痛快さが一番の魅力。



5/18
俺たちニュースキャスター』を観た。
終始笑っていられた。オープニングから最高なんだけど、途中のラブシーンの馬鹿さ加減には度肝を抜かれた。新しいスーツを買う行為への喜びっぷりや、無駄な戦闘シーンとか、すげー馬鹿馬鹿しさ。しかし、よーく見ると知性が溢れていると感じた。実はバカがよくやる脈絡の無さが無くて、常識を前提としたズラし方が上手い。それにしても、何だ、あの四人の顔は!笑うに決まってんじゃん!



5/9
『複製された男』を観た。
鳴り続ける重低音の音楽、不可解な繰り返しの映像、細かすぎる動作を長く追う映像。それらが不穏さを煽る。観ている間の「この映像は何だ?」より、観た後の「あの映像は何だったんだ…?」が強い。残り続ける。作品の内容をちゃんと理解できていないという不安も残り続けている。観た後にネット上で一つの解答を見つけたが、それを読んだ瞬間に答えがわかっていたような気分になったのは不思議な体験だった。確かその答えに辿り着いてはいなかったはずなのに、自分で辿り着いていたような気がした。全編通して半信半疑で観た結果だと捉えている。



3/19
『ヤクザと憲法』を観た。
現代のヤクザの生活という見たことないものが見られたという実感はある。小さなヤクザ、ヤクザ見習い、年を取っている舎弟のヤクザ、ヤクザの顧問弁護士。彼らには強烈な実在感がある。組長の画の格好良さは若干虚構性を纏っている。しかし、冗長なカメラワークや挿入されるイメージカットが退屈で、冒頭は少し寝てしまった。意図はわかるけど、作為的になり過ぎる。固定カメラの多用も同様の理由で違和感があった。タイトルはキャッチーさを狙ったのだろうが、大袈裟過ぎて釣り合わない内容だった。あるいは、無理矢理にタイトルになる主題を見つけ出したように見えた。



3/5
『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離(ディスタンス)』を観た。
非常にシンプルな恋愛映画。主役の二人のやり取りの『自然さ』が凄い。彼らが恋に落ちる状態を無理なく設定するための脚本もめちゃくちゃ練られている。一晩の出来事を時系列に沿って素直に描いているが、二人の過去も未来も気になる魅力に溢れていた。



2/28
『NINIFUNI』を観た。
アート系映画(あるいは、フランス映画)特有のワンカットが長過ぎる退屈な映像が続く。監督が明言してる通り、『死体の背景で踊るアイドル』が見せ場で、そこが全てだった。盛り上げられるパートはいくつかあるが、周到に意識的に盛り上がるのを避けて、超低温の映画にしていた。その狙いに対して、宮崎将のキャスティングがとても的確で、とにかく何かを思いつめてそうで、とにかく何かを起こしそうな緊張感を醸し出してるのが良かった。



2/16
『ウイークエンド』を観た。
徹頭徹尾、悪夢。ナンセンスというヤツか。観客に不安を与えつつ、疲れさせる。そして、眠くなる。それにしても、こんなに政治的・社会的主張の強い作品だとは思わなかった。また、万遍なく映画で実験している。矢鱈と長い1カット、編集ミスのようなリピート、何かのエラーのように乱れる映像。誰が何を喋っていたのかは覚えていないけど、鮮烈な映像の断片はずっと脳裏に残っている。



1/16
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を観た。
主人公はシャーロック・ホームズを演じたカンバーバッチのためにあるような役だった。発達障害抱えてそうな天才の変人が似合い過ぎる。性的嗜好がここまで物語に食い込んで来るとは思ってなかったので、意外だった。性別・性的嗜好を超えた情愛から感じた純粋さには驚く。タイトルは、解読済み暗号を密かに利用する方法と、性的嗜好の偽装を暗示するダブルミーニングだったのでは?それにしても、蛇足感たっぷりの邦題には辟易させられる。



1/2
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ー石野卓球ピエール瀧』を観た。
僕が思っていた電気グルーヴのカッコよさへの理解が、更に深まる仕組みになっていた。映像見てて知ってる話が出てきて、想像以上に自分が電気グルーヴ関連のものを読んでることに気づいた。本人達も言ってたけど、本人達がインタビューに答えないのが上手い戦略だった。結成前夜から現在まで振り返りつつ現在の映像も見ていく構成なのだけど、楽曲が出来た経緯や評価について客観的な意見を聞きながら映像を見ていくと、本人達のライブ映像は言うまでもなく、狂人のようにふざけまくっている映像でも、感動らしきものを積み重ねられる。卓球と瀧の唯一無二の異形の友情もしっかり映像で残っているのが素晴らしい。見てしばらくは、何でもないものまで可笑しく見えたくらい、思考の変容を起こす映画だった。電気グルーヴは狂いまくっててカッコ良すぎた。